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2014 8th Sep.
★ ぼくらまるで処女のように
【高校生と高校生】
キスするのなんか初めてじゃないさ。
でもどうしてだろ、まるで処女みたいに震えるんだ。
舌だって、粘膜すら触れない、乾いた唇をくっつけるだけ。
幼稚園児のお遊びみたいなキスさ。ほんとに重ねるだけ。
なのに君ったら震えるんだ。
オレが近づくたんびに体を強張らせて、ともすれば体は逃げようとする。
逃げられないよう捕まえるのは簡単だ。だのにオレはそれが出来ない。
指を交互にして繋いだばっかりの手に力を込めて、触れているのはそこだけだから、逃げないで、逃げないでと必死に祈る。
怖がる君をやっとこさ追いかけてキスをして、だのに君が必死につぶった瞼がオレを止めるんだ。
キスなんか初めてじゃないさ。
でもどうしてだろ、胸が震えてたまらないんだ。
無理に抉じ開けて食い散らかしたって出来るはずなのに、オレの体は動かない。
目の前の処女みたいな君が、繊細な砂糖菓子みたいに見える。
無理しちゃならない、傷つけちゃならない、大切にしたい、そう、大切にしたいんだ。
君がとてもとてもとても大切なんだ。
「泉、」
「ん……」
「好き、……好き、だよ。」
「……ん。」
キスなんか初めてじゃないさ。
だのに今さっき君の唇に重ねたこの唇がさ、妙に痺れるんだ。
オレのじゃない熱と、皮膚と、柔らかさと、匂いと、君のすべてがこの唇に乗っかっている、残ってる。
ああまるで、処女みたいだ。
きっとこれが初恋なんだと思った。
―― Cherish.
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