耳元で囁いて





まず見えたのは、傷痕があちこちにある太い腕。
感じたのは、首筋にかかる規則正しい寝息。
背後から抱き枕のように抱きしめられていると分かったのは、目覚めてからしばらくたってからだった。
寝ている間にこんなことをされたのは初めてかもしれない。…もしかして、いつも私の方が遅く起きるから気づいていないだけ?
寝息がくすぐったくて、せめてベオウルフの方に向き直ろうと思って身じろいでも、彼の腕はびくともしない。

…ベオウルフの寝顔が見たい。
昼寝とは違う、熟睡している彼の顔。

起こさないように、それでも頭を動かせる範囲内でぐるぐる回してみる。もう少し、もう少しで…

「…起きてたのか、ラケシス」

…起こしてしまった。

「ねえ、いつもこうしているの?」
「こうって?」
「こうよ!」

太い腕を下から持ち上げる。

「抱き心地が良いもんでな」

ククッと笑う吐息が耳に掛かって思わずゾクッとした。

「耳、ホントに弱いなぁ」

嬉しそうに言いながら、さらに耳元に唇を寄せてきた。そうされるのが嫌じゃないのが悔しい。

「今日のご予定は? お姫さま」

おどけた口調で、でもその唇は耳朶をなぞってきて…

「…っ、もう少し…このままで…」
「望むところで」

彼の低い声が身体中に染み通っていって、耳から熱くなっていった…















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