*降誕祭の夜に

「こんなに静かな降誕祭は初めてだな」

雪が静かに降りしきる夜、傍らで静かに酒杯を傾けていたベオウルフが呟いた。

「そうなの?」

「ああ。たいてい独り者同士で朝まで飲んでたりしてたからな」


「傭兵になる前はどう過ごしていたの?」

自嘲気味に笑いながら言う彼の横顔を見ながら、私はふと湧いた疑問を投げ掛けた。


「別に降誕祭だからどうこうってことはガキの頃からしなかったな。する余裕もなかったし、一人じゃなぁ…」

ベオウルフは私が見たこともない表情で淡々と語る…寂しそうともとれるのかもしれないけれど、そんな単純なものではない複雑な表情…。


気が付くと私はベオウルフの頭を自分の胸に押し付けるように抱きしめていた。

「ラ、ラケシス?! 何だ、どうした?!」

戸惑うベオウルフの声が腕の中から聞こえた。
私はベオウルフの額にそっと口付けると、この人は一体いつから“独り”だったのだろうと考えながら抱きしめる腕に力を込めた。


「…何泣いてンだか知らねぇが…」

その声にハッとして見下ろすと、力強い腕に引き寄せられ、ベオウルフの唇がいつの間にか流れていた私の涙を拭った。


「とりあえず今はお互いに独りじゃないからな」


そう言いながら私を抱きしめるベオウルフの顔は見えなかったけれど、その声はとても優しく温かく、私の中に染みとおっていった…。

●END●



2008クリスマスに書いた小話を少〜し手直ししてみました。ベオを慰めるつもりが慰められたラケの話…にも見えます(^^;)



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