*男の勝手

昼寝から目覚めると、ラケシスが鏡台の前で髪を結い上げているのが見えた。

「…どっか出掛けンのか?」
「ううん。こういう結い方をシルヴィアに教えてもらったから練習しているの」

ノディオンではそういうことは侍女にしてもらっていたのだろうが、ここではある程度自分でしなくてはいけない―だがラケシスはむしろそれを楽しんでいるようだった。
しばらくその後ろ姿を眺めていたが、ふと疑問が湧いた。

「それ、わざとか?」
「それって?」
「コレ」

ラケシスに近付いて白いうなじに掛かるやや長めの後れ毛を指でつまんだ。

「こうした方がいいかなぁって…男の人ってこういうのが好きなのよってシルヴィアが言っていたけど」
「………」

バカ正直に「好みだ」と言うのもどうかと思い、俺はラケシスから視線を逸らし沈黙した。
そんな俺を気にすることなく、ラケシスは言葉を続けた。

「今度のラーナ様との晩餐会にはこの髪型にしようかしら、どう?」

聞かれて再び視線を戻せば、ラケシスが肩越しに振り返っていた。

髪を結い上げて纏めている清楚な印象とは正反対に、耳の近くで無造作を装って緩く波打つ髪や、うなじに掛かる後れ毛は男の目を引くには十分過ぎた。

―大体晩餐会には男もいるんだぞ―

喉元まで出掛かった台詞をぐっと飲み込むと、ラケシスの肩に手を置いた。

「ベオウルフ?」

見上げるラケシスの後れ毛をくわえると、彼女が短く息を飲むのを感じた。

「こうしてほしいからそういう髪型にしたんだろ?」

勝手な言い分だが、今はそう言いたい気分だった。
俺しか見たことがない、俺しか触れたことがないラケシスを独り占めしたい…鏡に映る我が儘な自分を心の中で嘲笑いながら、彼女の首筋を唇でなぞった。

「…ッ!…ダメ…ッ…ベオ…」

敏感な反応と弱々しい抵抗は男をより煽ると教えた方が良いのだろうか…だがそれも男の勝手な考えだな。


ラケシスの手首を掴み動きを封じると、手で触れても唇でなぞっても滑らかなうなじのあちこちに口付けた。


髪を結い上げられないくらいに跡が残る程、強く―



●END●




同盟開設3周年記念リクエストの『ベオウルフがヤキモチを焼いちゃったり独占欲をあらわにしてしまう』話でしたが…このベオさん、ホントに独占欲が強いわ〜;
ベオさんのヤキモチの対象が『エルト兄や他の男性以外』ということで、最初はちびシャナン辺りに…とも考えたのですが、まだ見ぬ(見ないかもしれない)不特定多数?な対象に…こ、これで良かったでしょうか;

アダルテイストなスケベオはもう仕様と言うことで(笑)

リクエストありがとうございました!



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