*動き出す
香水なんか自分がつけるものではないから詳しくないし、女が付けている時には甘ったるいとか強すぎるとかそういうことしか思わなかった─少なくとも今までのベオウルフはそうだった。
「ありがとう、ベオウルフ」
だから剣の稽古中に足をもつれさせ倒れかかったラケシスを咄嗟に支えた彼が、どちらかというとまだ少女の雰囲気をまとっているお姫さまの、控えめだが甘い香りを悪くないと思ったのは自分でも意外だった。
お姫さまのことだからいつも付けていたのだろうが、今初めて気付いたのは、事故とは言え彼女がベオウルフの腕の中という至近距離にいるせいだろう。そしてその香りは離しがたく──
「ベオウルフ?」
しっかりと立っているのに、ベオウルフが自分を支えるように腕を離さないのを不思議に思ったラケシスが問いかける。
「あー…すまねぇ」
ボリボリとバツが悪そうに頭を掻きつつ、ラケシスから離れる─離れると香りもしなくなるのが寂しく、そしてあの香りに包まれるであろう、まだ見ぬ男に対し、ジリジリとした、苛立ちとも取れる思いを抱いていることに彼は驚いていた。
「…何考えていやがる…」
汗を拭くラケシスの後ろ姿を見つめながら、ベオウルフは苦々しく口の中で呟いた。
●END●
『近付かないと分からないくらいの香り』から考えた話です。ベオラケというよりベオさん→ラケな感じでもやもやとしてますが、こういう話を書くのも(読むのも)好きですv…オフラインでも似たような話描いてますけどね(爆)
倒れかかったラケシスを支える有りがちパターンでスミマセンf^_^;
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