ローズマリー
葉だけだと独特の匂いがするそれは、紅茶に浮かべると存外悪くなく…体に良いそうだからと言う彼女に度々出されたせいかもしれない。
何も知らなければ匂い以外気付かない程度のものだが、確かにいつもの紅茶に比べれば血の巡りも良いような気はした。何かと不摂生な自分のために彼女なりの気遣いと工夫をしたのだろう。
「気休め程度ですけど…」あの声でそう言われればもとより断ることなど出来なかった。

そんな取り留めのない、だが大切な思い出を兵舎の片隅にある茂みの前でリヴァイは噛みしめる。
その茂みがあの葉、ローズマリーだと知ったのはごく最近のことだ。たまたま通りすがりにどこかで見たことがあると思い、固い葉に手が触れてあの匂いがしたとき、ああこれか、と。

彼女と想いを通わせたことに満足して、彼女がどこからその葉を取ってきたのか知ろうとしなかった自分。
思い出が多ければ多いほど良いかは分からないが、もっと尋ねておけば彼女のいろいろな声も言葉も顔も心すらも引き出すことが出来たのではないかと、それを糧にすることも出来たのではと…

「茶葉と一緒に入れるだけですよ」

枝をちぎり、その匂いを手の中に閉じ込めたリヴァイの脳裏に、そう言って苦笑するペトラが浮かんでは消えた。




ローズマリー:追憶、思い出

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