※キャラ崩壊注意。弁慶さんがド鬼畜です。








物に溢れた部屋、その御簾の隙間から夜空が見える。

時期は春先…。季節から見て寒くもなんともないのだが風が抜ける度に外が無性に気になった。


――口をつぐむだけでは押さえれない。


ある程度の年齢の者が聞けば中で何をしているのか目にしなくても分かるだろう特有の声と音。それらは多少の誤差あれど一様で、愛の上に成り立っている。

だから私はこれがそう、とは…認めたくなかった。

頭上で一括りにされた手を堪える為に痛いほどにギュッと握り締める。爪が手の平を傷付ける感覚を味わったが貫かれる感覚には遠く及ばない。

段々息が荒くなり、揺さぶりを加速させながら打ち合う音が派手なっていく。

そのどれもに耳を塞ぎたいのにどれも実行出来ない。


「…っ…。出る、っ…」


擦れた声が余裕なく絶望を宣告し、最早速まりようのない突き上げに力が加わった。奥を抉るように――それは快感を共有しているはずの片割れをただ玩具のように揺さぶり、迫り来る衝動を吐き出さんと動いている。


「ん、んぅ。んっー!」


渦巻く思考は弾けるような電流に遮断され、私もびくびくと痙攣した。

それとほぼ同時に頭上から気持ち良さそうな吐息が一拍一際大きく漏れた途端、どくんと牡が中で震えた。膨れ上がったそれから勢い良く熱いものが吐き出されていく。


「……はぁ」


吐精が終わってもそこにぎゅうっと牡を押し付けていたが気が済んだのか、身を引いて汗に張りつく茶金の髪を掻き上げた。

二対に戻ったそこからは性交の名残がどろりと零れる。


「…すっきりしました。ありがとうございます、望美さん」


縛り上げられた両手以外に噛まされているのは猿轡。自身の涙すら拭えないのに返事なんて出来る訳がない。


「やはりどうにも溜まると苛々して駄目ですね。…ふふっ、酷くしてしまいましたね。――でも君が僕を避けるからですよ?」


優しい口付けがちゅっと額に降り、頭の後ろの結び目が解かれる。声が漏れる余地すらないほどきつく縛られていたそれからの解放に息を大きく吸った。


「はっ…、っ…」

「ご苦労様。――君はいい神子ですね…。皆にとっても僕にとっても」


独り言のような語り掛けは耳に届いているのだが快感の残り香にくらくらして頭が回らない。

両手の拘束も覆い被さったままの体制で腕を伸ばし、丁寧に解いていく。ふと軽くなり、ツリかけていた筋が楽になると不意に手を引き寄せられた。

ふと、弁慶さんは眉を潜めた。


「あぁ…、手に力を入れすぎです。血が出てる」


弛緩した身体が上手く動かせなくて操り人形のようになされるまま、診察を許す。すりと手の平を指が這う感触。…かなり力を込めたから皮くらいは剥けているかも知れない。

己の無力と憤りの残り傷にも彼は唇を寄せ、舌を這わせた。


「ん…。後で薬を塗ってあげます。このままだと剣を持つのに痛むでしょう?」

「い、…いです。大丈夫です、だから…」

「僕は素直な人が好きですね」


返答を遮る台詞。

君の意見なんて聞いていないんですよと暗に言われてるようで思わずびくっと身体が震えた。

握られたままの手を自分の元に返す事も出来ず、はいと消え入りそうな小さな声で返事をする。すると満足そうに瞳が甘く弧を描いた。


「折れてくれて良かった。君は無理をしがちですから膿みでもしたら大変です。…ふふ。まぁ、でも兵には普通こんな傷で貴重な薬は使わないんですけどね。君は特別扱いですよ」

「…ありがとうございます…」


兵は使い捨て、神子は一点物。…そう言う事だろう。欲望の捌け口に出来る分失いたくないのかも知れない。


「弁慶さんは――何で、何で…。私何かを…」


縛る理由、大切にする訳は分かったが何故選んだのかが分からない。

彼なら誰の弱みでも簡単に握れてしまうだろう。

すると乱れてしまった私の髪を整えるように梳いてくれていた彼はぱりくりと瞬き、うーんと唸ってみせた。



「……然したる理由は君が僕らに一番近しい女性だからでしょう。そう言う生業の方の方が色々まぁ、都合はいいですがやはり全く思い入れのない女性を組み敷くよりも多少なりとも夢想を抱いた女性を抱く方が深く浸れますからね」

「私の事…好きな訳じゃ――」

「ええ。ありませんね」


はっきり、きっぱり。

撫でる仕草だけがとても優しく、それだけ彼を遠くに感じた。


「咲く花を美しいと思っても想う訳ではないでしょう?第一君がこちらの世界に来てまだ日も浅い…僕はそれほど惚れっぽくありませんよ」


世界が傾いていく。

正せず流れたこの奔流の先には私の求める未来があるのだろうか。

…分からない、だから捨てられない。








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