崩しかけた積み木の搭は壊れるしかない。けれど落ちた積み木は今、転がって組んだ本人ですら予期せぬ形で再び形を保っていた。




「ん…、んっ…」


柔らかで暖かな激情を伴わない愛情のキスを何度も受けながらも押し倒されまいと望美は何とか肘を着き、踏ん張っていた。

奇しくも今の態勢だと天井の骨組みがよく見える。

目の前の男は過去の役職に相応しく何かにつけて周到で容赦がない。自らの意志を曲げる事自体が滅多になく、恐らく望美の可愛らしい抵抗などに意味はないだろうがおいそれとその行為を受け入れられるほど彼女は慣れてもいないし、成熟もしていなかった。


「べっ、弁慶さん!」

「ん…。何ですか?僕の可愛い望美さん」

「うっ…!き、今日は止めておきませんか?昨日もしたし、あの、私ちょっと…こ、腰が…」

「おや、そうですか。それはいけませんね。…痛むのはこの辺りでしょうか?」


自らの不調を訴えて弁慶を跳ねのけようとするが日中の彼女の立ち振舞いから嘘を見抜いている弁慶は既にかなり肌蹴ている裾から手を入れ、腰を擦った。

艷声と言うより驚きで裏返った悲鳴を上げる望美を気にせず、ねっとりと労るには余りにもいやらしく撫ぜながら弁慶は望美のきめ細かい肌の感触を楽しんだ。


「明日からは九郎に君を盗られてしまいますからね。たとえ少しの逢瀬でも君に触れていたいんですよ…」

「――あ…」


仄かな灯りに照らされた瞳は揺らめき、どこか切なげでその距離の近さも手伝ってじっと見詰められれば何も言えなくなる。

九郎を選び、弁慶にも身体を許した望美の中には壊れなかったとは言え、未だに罪悪感が燻っている。二人が責めない分、時に顕著にふとした拍子にそれは顔を出し、望美を責め立てた。

相変わらず思っている事が顔に出てしまう望美に苦笑いしながら弁慶は謝った。


「望美さん、そんな顔をしないで。僕は君とこうして居られるだけでとても幸せなんです。今のままで――どちらかを切り捨てる必要なんてないんですよ?」

「で、でも…」

「愛する女性を独占出来ないのは確かに苦痛ではありますが君は僕達両方を見てくれている。それならそれで構いません。…自然と時の流れに身を任せていればそれ相応の形に収まりますよ。ね?君が苦しむ必要なんてない。僕と九郎の想いを君はただ受け入れてくれていればいいんですよ…」


にこり。

優しく優しく微笑まれ、望美は弁慶の毒を飲み込んでいく。

力強く暖かで何ものからも守ってくれる九郎。目を塞ぎ、耳を塞ぎ、何も感じる事が出来ないようにする弁慶。どちらか一方ならその愛情に疑問を感じる事も出来るかも知れないが両方行使されてしまえば望美に逃げ道はない。



立てていた肘は伸ばすと少し痺れていた。





*****





「――可哀想に。許せないね、オレの姫君に水仕事をさせるなんて」

「ひゃっ!?」


朝、朝食を終え、汲んで来ている水で使った食器を洗っていると不意に後ろからそっと囁かれて飛び跳ねた。

その拍子に積んであった皿が崩れ、ガチャンガチャンと音を立てる。――不幸中の幸い、一枚も割れていない。


「っ、ヒノエ君!?」

「久し振り、姫君。戦装束のお前も眩いくらいだったけどその衣装も似合ってるね。可愛いよ」


勢い良く振り向くとそこには望美の記憶よりも幾分か髪も身長も伸びたヒノエがいた。口の端を微かに釣り上げ、悪戯が成功した子供のような反応をしている。


「何でっ。いつ来たの!?連絡してくれたら迎えに行ったのにっ」

「ん、三月ほど前かな。ちょっとこっちでも貿易の用があってね、野郎共は大体港に置いてきた。その時に文を出せれば良かったんだけどこの大陸じゃ、いつ姫君達の手元に渡るか分からないから直接寄った方が早いと思ってね」

「そっか…うん、そうだよね。わざわざごめんね。でもとにかく会えて嬉しいよ!」


ホントにヒノエ君だうわぁうわぁとはしゃぐ望美を同じように嬉しそうに、見詰めるヒノエは眩しそうに目を細めた。


「……別れてかなり久しいけど変わってなくて安心したよ。やっぱりお前はそうやって笑ってるのが似合うよ、望美」


丁寧に編まれた望美の三つ編みを一房手にかけたヒノエは身を屈め、ちゅっと軽く頬にキスをした。


「〜〜〜、ヒノエ君っ!!」

「ははっ。やっぱりお前は九郎には勿体無いぜ。アイツに飽きたらいつでもオレに言いな?熊野の棟梁の花嫁の席は空いてるからさ」

「もうっ、ヒノエ君はいっつもそうなんだから!そう言う冗談もいいけどほどほどにしておこうよっ」


真っ赤になりながら怒る望美に促されながら乗ってきた馬を居住地に近い適当な場所に括り付け、自分同様驚く顔を見にゲルに入った。






ヌルい(´Д`)

九郎は遥か昔にクリアしたっきりなのでEDがかなり曖昧です。ヒノエはいなかったような…。とりあえずモンゴルに皆行っていて将臣は平家だから…いな、かっ、た?……もう一度やり直す必要がありそうです。

前半と後半で分けてかいたので繋ぎがおかしい。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -