紅雄&威瞬と出られない部屋(ボツネタ)
2020/07/08 20:08

【10本の媚薬を3人で分け合って飲まないと出られない部屋】

デカデカと掲げられた指令文に紅雄は頭を抱えた。

傍らの少女もかなり困惑しているのが分かる。

現状を簡単に説明すると……生徒会室で昼寝をしていた紅雄が目が覚ますと、何も無い六畳ほどの真っ白い部屋に意中の少女と共に閉じ込められていたのだ。

はいはい妖怪の血族の仕業ね、いつものご都合のやつね。まあそのうち恭太郎が異変に気が付くだろう。と、余裕でいられたのは最初の内だけで。

突如壁にぼんやりと浮かび上がった文章に、冷や汗が滲んだ。

間違いない。これは――『出られない部屋』だ。

何故紅雄が知っているのかと言うと、既に他校で複数の被害が報告されていたからだ。

所謂『友達以上恋人未満』や『両片思い』の焦れったい関係の者ばかりが標的となり、いかがわしい命令を実行しなければ文字通り部屋から出られなくなるという。

どう考えても監禁罪だが、これによって二人の仲が進展したりカップルが成立したりなんてこともあって本格的な犯人探しは行われてこなかったらしいが、まさか自分達が被害を受けるとは想像していなかった。

確かに紅雄は絶賛片思い中であるが、一体どこからそれが漏れたというのだ。

そもそもどうやって、眠っている紅雄を起こさずにここまで運んだのだ。

……など、色々と疑問は残るが、まず最初にこれだけははっきりさせておく。

どこの誰が干渉しているか分からない場所で、紅雄は彼女とどうこうなるつもりはない。

もしかしたら覗かれている可能性だってあるし、最悪録音や録画なんてこともあり得る。なので、決して紅雄がヘタレだからではない。断じて違う。大体無責任に「さっさと告白すればいいのに」とか言うヤツは、もし断られた場合は責任取ってくれんの?時間巻き戻してくれんの?無理だろ?だから俺も無理!

……話が脱線したが。

実は引っ掛かる点も一つあるのだ。

「『三人で分け合う』?……ここには俺とお前の二人しかいないよな」

「う、うん……そう思うけど、」

二人して首を傾げていると、背後で何か重たい物が落ちる音がした。

直後。

「いッッてぇ!!ケツ打ったぁッッ!!!」

悲痛な叫びが部屋中に響いた。

咄嗟に二人同時に振り返ると、よく見知った少年が床にうずくまって悶えていた。

「しゅんくんっ」

「威瞬!?」

二人の声が重なる。

一体どうなっているのか。今どこで何をしているのか分からなかった威瞬の突然の登場に驚きを隠せない。

紅雄同様どんな手段を用いて威瞬をここに連れてきたのかは、この際考えないとして。

紅雄は笑えない状況に再び頭を抱えた。

「よりによってお前が三人目かよ……」

「っはぁ?何の話だよ」

「しゅんくん、大丈夫?」

「大丈夫じゃねぇ……ほらここ、落ちた時ここ思いっきり打った。今もヒリヒリする。もう意味分かんねぇ」

「そっか、痛かったね」

ここぞとばかりに可哀想な俺アピールをして二回りは自分より小さな少女にベタベタする威瞬に、到底同じ真似など出来ない甘え下手の紅雄は「チッ」と舌打ちしてしまった。

これだからツンデレは。デレの部分をここぞとばかりに発揮してんじゃねぇよ。

「何も知らない憐れなお前に、今の状況を親切に説明してやるからよぉーく聞けよ」

わざわざ威瞬と彼女の間に身を割り込ませるようにして、紅雄は切り出した。

一通り話終わると威瞬はキョロキョロ室内を見渡した。

「で、そのビヤクはどこにあんだよ?」

「あっ、あのバスケットの中だと思うよ」

いつの間にか部屋の隅に用意された籠の蓋を開けると、中には一見栄養ドリンクのような瓶が十本おさまっていた。

本物の媚薬……なのだろうか?

『三人で分け合う』なら一人最低一本は飲まないといけない訳だが、紅雄と威瞬よりも問題は彼女だ。

まず紅雄か威瞬が絶対毒味するとして……どの程度効果があるのかを確認した後、慎重に配当を考えなければ……。

と、考え込む紅雄をよそに威瞬はさっさと瓶を取り出した。

「んじゃ、手っ取り早く始めようぜ。お前は体が小せぇから一本だけ飲めよ。後は俺と紅雄でどうにかすっからさ。んん?そういや九って二で割れたっけ?あ、蓋固いから開けてやるよ」

「しゅんくん、でも……」

「こんなとこ早いとこ出ようぜ」

「おいおいおいコラ待て!!このクソ犬ふざけんじゃねぇぞ!!!」

コイツに得たいの知れないモン早速飲まそうとしてんじゃねぇぞ!?
と、怒鳴る紅雄に威瞬は心底不思議そうな顔をした。正直ムカつく顔だった。彼女がいなかったらぶん殴っていただろう。

「お前媚薬って何の薬か知ってんのか!!」


××××


拍手文にするつもりだったんですが、ダラダラ長くなったんでボツ。





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