2011/06/30 19:42




帰れ、そうは言えない夜中に押しかけるなんて、我ながらズルいと思う。

「どうした?眠れなかったのか?」

それでも、冷ややかな視線を向けながら温かい言葉をかけるあなたの方がズルいと思うから、僕はここに来たのだ。

「なんか、飲み物、持ってくるな。」
「要りません。」
「…バニー……?」


「僕を、抱いてください。」


「………。」
「もう一度言います、僕を抱いてください。」
「……………。」


予想はしていたけれど、黙ってやり過ごそうなんて本当にズルい人だ。


「わかってます、わかってましたよ。
女では亡くなった奥さんが一番で、家族では娘さんが一番で、僕はあくまで男として一番だったことくらい。
あなたの中の一番どころか二番にすらなれない、それくらいは。
だからあんな冷たい目で僕を見たんでしょう?
男だからっていう言い訳が使えなくなるから。
僕が男だったから気持ちを受け入れたフリをしていた、そうですよね?」
「バニー!それは違っ」
「だったら、」


彼を床に押し倒した。
そして、首に手を添える。


「僕を抱いてください。」
「………………。」
「好きだって言ったじゃないですか。
愛してるって言ったじゃないですか。
性別が変わったら愛せないんですか。
僕という人間を愛してくれたんじゃないんですか……!!!」

女性になって涙もろくなったのか、目からはらはらと流れる涙を止められない。

「…バニー、俺は……」
「もう、なんでもいいですよ。
奥さんの代わりでもいいんです。
だから、だから…………」







僕を、愛して…………



















女性の扱いには手慣れているんだろう。
(当たり前だが)この体になって初めての性行為だというのに、体の芯まで溶けてしまうような気持ちよさだった。
不器用に見える手も優しく、そして温かかった。

でも、僕がどんなに好きだと叫ぼうが、一度も名前を呼んではくれない。
荒い呼吸の音しか耳には入って来ない。
それを自覚して、体は熱くなるのに心は冷めていった。






オジサンの、馬鹿






そう思いながら意識を手放した。


















翌朝、目が覚めると僕の体は男に戻っていてとりあえず安心した。
隣ではまだオジサンが寝ている。
ふと、彼の左の薬指が目に入った。
結婚指輪、僕がどんなに頼み込んでも外してくれないんだろう。
だったら、もう、






「……左手ごと切り落としてもいいですか?」












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