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土方くんの予報は見事に当たり、次の日は朝から大雨だった。夏の始まりと終わりは季節の変わり目として雨がよく降るなんて昔聞いたことがあるけれど、もうすぐ夏が終わってしまうということだろうか。それとも偶然の雨なのだろうか。部屋でベットに横たわった。

「味噌が切れたから買ってきて」

千円札を1枚渡された。母さんが味噌汁を作っていた最中で手が離せないから変わりに味噌を買ってこいということらしい。最初は「えー」と言った私だったがそれを買ったお釣りは自由に使っていいという報酬的な許可が出たので傘を差して外へ出た

「やあ、久しぶり。」

スーパーへ行く途中に傘を差して元気に跳ね回る神威に会った。雨が降っていて心なしか嬉しそうに見える彼に「元気そうだね」と返事する

「うん、俺は晴れてるより雨が降ってるほうがどちらかというと好きだからね」
「太陽に弱いもんね神威は」
「あーバレちゃった?」
「直射日光には気をつけて」

えへへと弱った笑みを見せた神威はとてもウキウキしていてこれは雨だからと言う理由だけじゃない気がしてきたので思わず聞いてみた

「何か楽しいことでもあった?」
「いや、これからあるんだ」

「これから…?」と怪訝に思った私に神威は鼻の前で人差し指を立て「みんなには内緒だヨ」と言ったあとに続けた

「俺の仲間がもうすぐ来るんだ」
「へえ、神威の仲間。同じ学校の?」
「うん。5、6回ダブってる」
「ダブっ…!じゃあ実際は先輩じゃん」
「まぁね、でも俺の方が強いから俺の方が上だよ」
「ええ?」

傘を握っていない方の手に拳を握りしめ、俯く神威は確かにニヤリと笑っていた。時々意味深なことを言うけど全然わからない。そりゃ知り合ったばかりだし、私が知ろうともしないからだけど。

「でもそんなに楽しみになるなんて相当仲間が好きなんだね、神威」
「いや、それだけじゃないよ」
「え?」
「久々に仲間と暴れるときがくるから、」
「…!?」
「なーんてネ、冗談だヨ。」

へへ、と笑い「じゃあね」と言い残した神威はどこかへ跳ねて行ってしまった。なんだか胸騒ぎがしたが神威が仲間と一緒に誰かに喧嘩を売ろうなんて思ってないよね。考えすぎかなとそのことを忘れ、再び歩み始める。少し進むと銀時の家が見えてきた。そこそこ大きな家で、庭には銀時のお母さんが趣味としているガーデニングの花が綺麗に咲いていた。銀時の家を通りすぎようと歩みだしたその時私を呼ぶ声が雨音越しに聞こえ、見れば銀時が丁度ドアを開けて出てきたところだった

「あ、銀時。どうしたの?」
「いや別に。名前こそどこ行くんだよ」
「私はスーパー。味噌買いに行くの」
「味噌ォ?そんなの頭に詰めたって頭の悪さは改善されねェぞ」
「うっさい死ね」

へらりと笑う銀時の腹に蹴りを入れてやった。がふっと苦しそうに腹を抑え屈む銀時を背に歩き出す。

「悪かったって」
「一生許さない」
「ごめんってば!」
「……」
「なんか奢ってやるからさー」
「例えば?」
「うーん…駄菓子屋の何か」
「かき氷が良い」
「よっしゃ任せろ」

味噌を買い、帰りに駄菓子屋に寄る。私と銀時が入ってくると店番をしていた神楽が笑顔で出迎えた。「いらっしゃいアル」と威勢のいい声と共に。

「何食うか決まったら私に言うヨロシ」
「おら、名前。早く決めて神楽に言えよ」
「んー私、レモン味のかき氷で」

神楽が「ハイヨ!」と返事をして店の奥へと消えていった。ガリガリと氷が機械に削られる音が聞こえてきたので神楽が作ってくれているんだろうか。嬉しいけど少し心配だった私は椅子に座りながらそわそわしていた。そんな私に「前もレモン食ってなかったっけ」と言った銀時は頬杖をついてジャンプを読んでいる

「お待ちどうさまネ、かき氷ブルーハワイ味ヨ」
「あー…」
「うん、神楽、お前は幼稚園児以下だ」

困惑した私に代わり銀時がストレートに言った。それに対して「なんでアルか!?」と神楽がテーブルに両手をついて反論する。神楽は自分のミスに気付いていないのだ

「お前さァ、今時、お店屋さんごっこしてるガキでも注文の1つくらい覚えられるんだぞ?なのに、高校生が注文聞き間違えるなんて前代未聞だな」
「ちょ、銀時」
「不良品を寄越したんだから、お代はタダってことでいいよな?」
「それ銀時がお金払いたくないだけじゃん!」

銀時に指摘されやっと気付いた神楽が頭を抱えて「オーマイガー」と身体を反らせて叫んでいた。そんなに落ち込まなくてもいいのに、と私は神楽に「おいしいよ」と言って食べる。ブルーハワイも勿論美味しい。ジャンプを読み終え暇そうにしていた銀時に話しかける

「銀時はもう進路決まった?」
「決まってねえ」
「えーもう8月なのに?」
「なるようになるさ」
「あーあ、ニート決定だね」
「俺は自由に生きるって決めてんの」
「あっそうですか」
「そう言うお前は決まったのかよ」
「え?決まってないよ?」

然も、当たり前のように答えた私に、銀時はガクッと肩を落とした。「ニート決定って、他人のこと言えた義理じゃねーだろ」と頭を小突かれて私は、あははと盛大に笑う

「口ん中、真っ青だぞ、名前」

横で頬杖をついた銀時が呆れたように笑っていた







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