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蹴って吹っ飛ばした張本人が私を睨む、ゆっくり立ち上がった私に首元を掴み上げられた


「昨日何処にいってたのよ」

『……別に関係ないじゃない』


私が発した返事を聞くなり頬を引っ張叩かれた衝動で背中を打って床に倒れる


「関係無くない訳ないじゃない私はあなたの母親よ」

『良くそんな事言えるわね、ほったらかしの癖に』


私の母親と名乗る人物にまた叩かれた。パシン、右頬がジンジンと熱を帯びていく。


『お金さえあれば続くと思ってるの?生憎ね、私はあなたの理想像になる気は全くないわ』


大人はいつもそうだ、他人でも身内でも自分の理想像を押し付けて、少しでも違ったら縛り付けて、自由を無にし、人を守ったという優越感に浸ってるだけ。
親だともっとそうだ、昔の自分と子供の今を比べる

そんなのはもう聞き飽きた


『手を振るうことで従うとでも思ってるの?それとも傷付けるのが楽しい?』


私は母親と呼ばれる世間体の人物を下から見つめる。目で目を合わせると母親は瞳を泳がせた、ゆらゆらゆらゆら。


『痛い、痛いよ、お母さん』

「……っ!」


母親の腕が私に振り下ろされる
そっと瞼を閉じて視界を暗くするとパシン、叩かれた音がしたのに私の頬が熱を帯びない
更に熱くなるはずなのに熱くない、そのまま。

痛くない

瞼を開けるとヒロトが私の前に立っていた、ヒロトの右頬がじんわりと真っ赤に染まる。そう、私を庇って代わりに打たれたのだ。
母親は青冷めた顔をしてただ突っ立っていた。


「ヒロト…ごめんなさ」


母親が謝りながらヒロトの頬に触れようとするとヒロトはその手を払いのけた。


「触らないで、母さん」


ヒロトがそう言うと母親は悲しそうな表情で後ろを向き机の上に数万お金を置いて家から出ていった。

バタン。

悪夢が終わった合図
窓からは生きる素を流し込んでいた。

痛さなんてなくなった。


Feel no pain
(痛みを感じない)







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