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止まらなかった、止められなかった
今なら人をひいてしまいそうな車の運転士の
気持ちが切実に分かるのだ
俺の下で可愛く喘ぐ彼女はとても愛しかった
愛しくてあいらしくて、俺のものにしたい。
気持ちが弾けた、とはまさにこのことだろう
みなとが…体を売っているのを耳にしたのは
そう短くない日。つまり大分前から分かっていた
屋上でぼやーっとしてたら学校では有名な遅刻魔兼幼馴染みの南雲晴矢が俺の名を呼んだその時から真実に胸が痛んだ
「お前の妹、みなとだっけ?
いつも駅前で違う男連れてるぜ」
腹が立った、酷く。なんでお前がそんなこと告げる
関係ない、かんけいない!
みなとはいつまでも俺だけしか知らないでほしいだなんてのは無理で横暴な願いで。
俺は学校を抜け出して駅前まで行った
みなとの代わりとはなんだけど俺がある程度成績を取っておくというみなとを少しでも傷付けないようにとしていた行動を放置した
まさかまさか、まさかまさかまさか
駅前で見たみなとは別人だった
もう一生見れない笑顔だって思い出せた鮮明に
ああみなとはもう俺だけじゃないのだと
とてつもない絶望感を食べた、美味しくない、不味い
俺意外に、笑顔なんて見せていないと思ってた
だけど違った、俺はみなとのなにを知っていた
ただ、違う表情を見ただけじゃないか、大丈夫。
俺はまだみなとの傍にいられる
携帯を取り出した、電話帳からみなとの名前を
探して通話ボタンを押した、短く、長いコール。
目線の先にはみなとが自分の携帯の音に気付いて
携帯を取り出した、ディスプレイを見た瞬間だった
さっきの笑顔は消え、冷たい瞳で通話ボタンを押した
『…ヒロト?』
「あ…ぁあ、みなと……」
胸が痛かった、返事も忘れて俺は意識が飛びそうだ
『どうしたの?ヒロト』
「…今日は家に帰る?」
平常心を保って声にした
『……今日は、帰らない』「っ…、そう。分かった」
ブチリと電話が切れて耳には残響。
―まだ鮮明に痛みは憶えているんだ
腕の中で何も知らなそうに、昔みたいに
遊び疲れて幸せそうに寝ているみなとにそっと
触れるだけのキスをした。
Steal a kiss from her
(彼女が知らない間にキスをする)
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