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今日も外から景色を眺める

君たちと離れて8年。
ふとこんな事を思い出したのか、今日は何だか良い気分になれた。
あれから何度も尋ねた。
『いつになったら帰れる』と。

それでも返ってきた言葉はいつも同じような言葉

だから、やめたんだ
私だって気付く。
帰る時は長い、と。
そう想ってた、今日まで

珍しく病室のドアの
ノック音が鳴り、開く。
入って来たのはお馴染みの病気の先生。


「御早う」
『おはようございます』


笑っている先生につられ
私も笑う。


「何だか、気分良さそうだね?」
『ふふふっ、分かります?』


まだ朝の8時。
先生が来るのは少し早い
いつもは昼過ぎ。


『早いですね、何かあったんですか?』


特に意味もなく、聞いた
すると私の掌には
一つの鍵が置かれる


『・・・・・・・・・?』
「おめでとう、今日で退院だよ。」





・・・・・・・・・は?


『あのですね、私、誕生日はまだ半年以上後なんですけど?』
「ははっ、信じれないと思うけどこれは月子ちゃんの家の鍵。」
『…からかわないで下さい。もう16歳なんです』


今まで、閉じ込めてた心を開けないでほしい
期待なんか、したくないよ


「じゃあ、自分の目で見てみて。車が迎えにきてるからさ」


先生はそれだけ言うと
鍵を私に握らせて病室から出ていった。


『……期待なんか、しない』


1人呟いた。
病室のクローゼットの中にあるワンピースに着替える
これは唯一の私服。
バックの中に大切な物を
詰めてチャックを閉じる


『…って期待してないのに何張り切ってるんだろ』


これは嘘?
それとも私の気持ちが嘘?
どっちだって良いの。
嬉しいのが本当。
腕にある3つのブレスレットもちゃんとある事を確認して病室のドアを閉める

廊下には人気がない。
個室の部屋は必要以上に人が来ないせいか
走りたい気持ちを抑える
体はまだ心配だから。


階段を降りて病院の自動ドアの前に立つ。


『外に出るの、本当久しぶりだな……』


手をかざすと自動ドアが
ゆっくり開いた。

外の空気。
自分の足で立って感じる
斜め横に居る先生に気付く自然と歩幅が増える。
手を振る先生の隣に
黒い外国車。



これまでは、嘘じゃないかと
自分の瞳を強く擦った



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