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―…目が覚めた時
私は助かったんだと思ってた。
自分の力で底から立ち上がって少しずつ前に進んで
光が見えてきた所まで自分で歩いたと思ってきた
けど私は底に居た時点で歩く気力もなかったのに
自分だけでは歩けなかったボロボロの体だった

人は誰だってそう。
自分一人で生きていけないの
どんなに頑張っても一人で生きていきたくても
生きれない、誰かが居ないと何も出来ないの

私はその人間のなかの最下層の者だ

誰かの力を借りて生きてきたの。
そんな、無力な人間だ

だけどね、そんな無力な人間でも
幸せは身近に感じれる

私は、こうして、人として生きてきたの。
独りぼっちじゃなかったの。

目を開ければ晴矢がいる
そんな、悲しそうな顔をしないで
そっと晴矢の頬に触れると晴矢は
私を見て優しく笑ってくれた。
そして口を開く


「……何で父さんが月子にそこまで必死なのかは月子が亡くなった娘に似ていた、唯一の親戚だったからだ」


昔、お父様の部屋に呼ばれた時に見た写真
ヒロトに似た少年と瞳子姉さん、
あと、一人の小さな少女
私は一目で私だと思ってたけれど
今考えればそんな事あるわけないんだ


「医者は父さんの言った通りに
多額の金をかけて月子を助けたんだ
その時にいろいろな手を使って
いろいろなものを使用して利用した、
そのせいか記憶が積みすぎて
きっと父さんの存在までも記憶は
消えてしまったんだ」


お父様はあれだけ私を可愛がってくれた、
だから感謝はしきれないほどしているのに

消えてしまった

仕方ないかもしれない
だけど私は……それでいいのかな

感謝してる、
それだけしか憶えていないのは偽りみたいで。

自分の手で拭っていた涙が安心する晴矢の手が拭う
ふわっと抱き締める


「父さんに会って来たんだ…」
『………うん』
「父さんはもう次の所行っちまったんだけどよ、
月子は笑ってるか聞いてきた」
『笑ってる……よ』
「そう言っといた、月子のこと大切なのは
変わんねえし父さんは今でも月子を思ってる」


ここに来て、晴矢達に会えて、普通に過ごして、
こんなにも温かいって思えてるのも
お父様が居たからで。

私、一人の力じゃない
一人じゃない。


「記憶がねえならこれから作ればいいんだよ」


幼く、昔の様に無邪気に晴矢は笑った。
何で晴矢を異性として、恋として
好きになったのか、気になってた。
何で、ヒロトか風介じゃないんだろうって。

それは辛いときにいつも必ず側に居てくれたから
一番最初に私を支えてくれたから。

そうなんだ。





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