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「本当に月子は覚えてないの?」
『うん…ヒロトは覚えてた、よね?』
コクリとヒロトが頷く
あれから次の日、ヒロトに相談を持ちかけてみた
昔から私はヒロトに相談をすることが多かったし、
一番知っていると思ったから
晴矢と風介が喧嘩しても最後にまとめるのはヒロトだったし、何だかんだでしっかりとしている。
「そっか…俺も調べてみるね」
『ありがとう、ヒロト』
「月子のためだから」
そう言って優しく笑うヒロト
騒がしい廊下も何だか耳煩くは聞こえなくなる。
『ねえ…ヒロト』
「何だい?」
『私、自分の記憶が何だか曖昧なの』
振り返って思い返すしてみると、私は毎日サッカーをしていて、たまに喧嘩をしてたり、たまに部屋でずっと寝てたりと。
それから病院に居た記憶
私は、病院で何をしていたの?
病室でただ8年の間をぼんやり窓を見ながら過ごして、過ぎていったの?
もし毎日窓を見ていたのなら景色ぐらい覚えてはいないの?
探しても、探しても、見つからない。
『私、仲良かった人を忘れてしまったのかな?』
胸を押さえてみれば、見えないけれど
確かに開いた穴があるのが分かる。
何かが私に足りない。
「月子は深く考えないで、俺はもう悩む月子見たくないんだ」
『…ヒロト』
「月子がサッカーを嫌いにならないで良かった」
『え…?だってヒロトは』
「違うんだ、月子を縛りつけようとしたのはやっぱり俺の我儘、俺はサッカーを楽しそうに見ていてくれる月子が一番だったんだって改めて思える」
私がサッカー部の練習を良く見に行くことにヒロトはどう思ってるんだろうと気になってたから、優しいヒロトだからまた目を瞑っているのかなとか不安に思ってたけれど聞けたヒロトの本音と思われる気持ち。
私達はやっぱりサッカーで繋がってるのだと思う
昔みたいにボールを蹴ってドリブルしたりは出来ないし、汗をかいてサッカーを楽しむことは出来ないのだけれど、不満に思うことなんて一回もない
私は少しだけ成長したのかな。
ヒロトに笑いかけてお礼を言うとヒロトも笑ってくれた。
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