………………………………
31
………………………………




俺は月子の家に向かう
ヒロトに言われた事がまだまだグルグルと頭に回る、ヒロトはいつもそうだ、肝心なことだけ隠すように教えてくれない。

俺が月子を好き?
そんなの当たり前じゃねえか。
小さい頃からずっと守ってきて、4人で笑いあって
過ごしてきた大切な一人だけの女の子。
泣き虫で弱虫なのに強がったり、負けず嫌いだった
月子も今は何故か変わったような気がする。
あの日、病院の後月子に何があったかだなんて
俺は何もしらない。
ただヒロトに言われた通りに悔しさを押し込んで
詰め込んで時が過ぎるのを待っただけだ。

会えなかった八年間、ずっと一人で病室に居たのだったら俺じゃ耐えられない

泣き虫なのは変わってないんだ、
俺に会った時だって半泣きなのを見たから。
だけど、負けず嫌い。
これはもうないんだと思った。

月子はサッカーを諦めた、
自分が一番好きな事を諦めたんだ。

けれど俺は、諦めてほしくない。
サッカーをしなくても、見てくれて笑ってほしい

やっぱりサッカーが好きだと言って
笑顔でいてほしい
今でも、あの月子の
泣いた顔を思い出すと胸の奥が痛い。

月子はやっぱりいつも笑っていてほしい。




「わー!ねえちゃんすげえ!」
「どーやるのー?」
「あたしにもできるかなあ?」


月子の家の近くの小さな公園で
小さい子供のはしゃぐ声が聞こえる。
俺は見向きもせずに足を進めた。


『出来るよ!おねーちゃんが出来るまで教えてあげるから!!』


足を止めた。
間違いない月子の声。
目をやると月子が小さい子供達に紛れて
サッカーをしていた
サッカーで笑顔を向けている俺が見たかった光景


『こーやってね…うん、そうそう!』
「出来たー!」
『うん!出来てたよ!』
「わーいいなあ、あたしにも教えてー」


男女関係無くサッカーを楽しんでしてる子供達
昔の俺らみたいで何だか懐かしく感じる。

手本を見せて、教えている月子は
何だかすごく眩しくて。

蹴って、転んで、そんで笑いあって。
制服が汚れても気にしない。
シュートを決めたゴールネットの音が聞こえる。


子供達に抱き着かれる。

嬉しい、これしか言葉が浮かばない。
俺はずっとサッカーをしている
月子を目で追いかけていた。




-




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -