………………………………
12
………………………………




軽い。
柔らかい香りが俺の鼻を擽るように通る


部活で練習試合の帰りにたまたま通った公園
小さくて何もないし興味を示さずに家へ帰ろうとしていただけだ。
…だけど、ベンチにうずくまっている女を見つけた瞬間だ
足は勝手に動く。
見た目で判断してた訳じゃない。
ただ、心に小さく期待が膨らんだそれに反応した
相変わらずな俺の想い

無意識に目の前に立ったものの何て声をかけるんだよ、俺。
けれども近くで感じた。
月子だって。
根拠なんてなかった、ひたすらの本能。


「おい、こんな所で寝てんのか?死ぬぞ。」


俺の一言でゆっくり上げた顔に。
一瞬で吹き上がる
8年会ってないが、ちゃんと俺は覚えてた
髪の毛も伸びてて、睫、身長、肌、全てが変わっていたけど
昔とはかなり変わっていた雰囲気も。

普段、鈍いと言われる俺でも分かる。

月子だって


懐かしくて、嬉しくて
抱き締めた温もりはそのまま








……だったんだけど
やっぱり中身はバカだ

コイツの方向性は無い
方向音痴にしても酷い

最近来たと言ってもこれだ。
本能のまま怒鳴っちまったら少し怯えだしたし。
月子の足じゃ遅いしかなり時間が掛かるからオンブすると言うと長々と待たされる。
ワンピースだからって…別に人もこの辺り少ないし何が嫌なのかわかんねぇ。

仕方ないから無理矢理両手で抱えてやると小さく悲鳴をあげる。

今も下を俯いたまま、俺に大人しく抱えられている
これは良いって……女がますます分からない。
昔はこんなに大人しくなかった、いつも駄々捏ねてたり、うるさかったり。負けず嫌いだった。



『晴矢…重くない?』


月子がおずおずと聞いてきた。
まだ俯いたままで。


「べつに」


走りながら答える。
月子はそっかとまだ俯いたままだ。
下を俯きすぎだし、息苦しくなるからやめたほうがいいんじゃねえか?


「おい………」
『…………………。』


注意しようと声を掛けたが返事なし。
足を止めて見てみた


「寝てんじゃねーか…」


まぁ自分ん家から歩いて来たんだし、疲れたよな。
月子に聞きたい事は山ほどあるが今日はやめとく。
また明日から一緒に居られるのは嬉しくてたまらない





月子の家まで後少し


着いたら風介とヒロトに電話でもしとくか。




-




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -