目の前でにこにこ、彼の名前はフィディオ。昨日からお兄さんになった、とても優しくて気さくな人でそれに……格好いいのです、がちょっぴり意地悪じゃないんじゃないかと思います。
さっきから向かい合わせの席でフィディオがじーっと見てくる、何で、パスタは普通フォークでくるくると巻いて口にする食べ物、と聞いたはず。それか私が頼んだとても美味しそうなバジルのパスタが食べたいのかな、そうか、そうなのか。
私はバジルのパスタをくるりとフォークに巻いてフィディオに差し出す。
「?なぁに、マリナ」
『えっ、パスタ食べたいのでしょ……?』
私が食べてる間ずっとパスタを直視していたから、と付け足したらぷっ、と彼は笑う。酷い、何が可笑しいの。
「ははは、そんなむっとしないで、可愛い顔が台無しだよ」
『…………。』
私がフォークで巻いたパスタをぱくりとかぶりついた。こここれは俗に言う、あーんっていうやつじゃないか。というか何で私は自分のフォークで巻いてしまったのだろうか、別のフォークで巻けばいいじゃないか…いや別に間接キスが嫌、とかじゃ、なくって…その。あの……
私は心の中で気持ちの整理をした、つもりだったのだけど。どうやら声に出てたみたいでまた彼から笑い声が聞こえる、もう恥ずかしい。これこそまさに穴があったら入りたい、だ。
「俺が見てたのはマリナ、可愛いかったから」
ちゅ、と額に軽いキス。思わず席をガタンと大きな音を立てて立ち上がってしまったではないか、反省の意を込めてぺこりとお辞儀をしたらクスクス。周りのお客さんが笑いだした、ああもうほんと恥ずかしい。フィディオまで顔を合わせずに肩を震わして笑っている、酷い。
元はといえ君のせいなんだけど
それからバジルのパスタを急いで頬張る、フィディオの半熟卵のカルボナーラはもうすでに食べ終わっていて。お会計は彼が払って下さいました。
そういえば午後から彼はサッカーの練習があるって言ってたし…んんん?時間的にもう過ぎてる気が。
「うん、早く行かないとね」
彼はエスパーだろうか。チラリとフィディオを見上げたら顔に出てる、とまた、くすっと笑みを浮かべた。ってあわわわ、彼はサッカーでキャプテンを主にやってるっておかあ、さんが言ってたからこれは大問題になるんじゃないのかな、どうしようチーム脱退とかされたら…ここれはいけない、早く行きましょう。
なるべくしっかりとした顔で言おうとしたら笑われた、もう何回目なんだろう。私、そんなに可笑しいのかな、そうなのかな。女の子ってこういう考えってしない、のかな。えーいもうどうでもいい!
「ほら、お手を。」
フィディオの白くてしなやかな手のひらが私の方へ伸びてきた、これはあれですね。お手を繋いで2人でランデブーってやつ、いやそんな馬鹿な。ヤケになって彼の手を取った、体がもの凄い速さで進む。
まるでお星様、流れ星みたいな。
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(要素)
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彼女がとても不思議な子みたい
けどこういう子が好きなのです