『フィディオ、格好良くなったね』


ふわふわの巻き髪を二つに掻き分けると彼女は微笑む。いきなりこんなことを言われれば誰だって少々驚くのだが好きな子に言われる言葉だ、嬉しくてたまらなかった。俺は彼女に言葉を返すように君も綺麗になったね、と言えば彼女はえへへ、そうかなと照れくさそうに。年を重ねる事に女々しさを増してゆく彼女にはくらくらするのだ、この言葉は決してお世辞ではなく本心。
彼女の携帯が鳴り、電話に出ようかと躊躇う彼女だが俺は出ていいよと言うとごめんね、と謝り席を外して通話ボタンを押した。ディスプレイには男の名前、彼氏だろうな、きっと。
にこやかに笑いながら携帯で話す彼女には体が熱くなった、いいな相手は。あんなに可愛い笑顔を浮かべながら会話しているのだから、その様子をしばらく見ていたら彼女の表情が急に変わった、悲しい表情。瞬間に苛立ちが湧く。俺だったら、俺だったら、彼女にこんな悲しい顔なんてさせないのに、ぎゅっと唇を噛み締める、ほんのりと鉄の味が広がったのは俺がまだ子供な証拠。感情に振り回されているのだ。
ばいばい、と悲しげに言って電話を切った彼女の表情は暗くて、伏し目がちに俺に言葉を発した。


『振られ、ちゃったぁ』

「…………。」


あははと無理矢理な笑顔を見せて、止めてくれ!と叫べば彼女は瞳をぱちくりさせて


『何で、フィディオがムキになるのよ?』

「それは……」

『ふふっ、ありがとうね』

「…ねぇ、俺じゃ駄目?」

『…………。』

「…………。」


不意に出てしまった気持ちには自分でも驚いたが後悔はしていなかった、出来なかったのだ。沈黙が流れる中また彼女はふふふと艶やかな笑みを浮かべ、

『私が、駄目かな』

「そっか」

『でも、いつかフィディオが好きになるのかもね』


その時はよろしく、と微笑む彼女に俺は任意を込めて額に口付けをひとつ、落とした。








世界でいちばん愛してる君へ







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フィディオイケメンの秘訣
101005



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