自分がふわふわと上下に揺れて、アメリカの独特の風が私の鼻を弄る。ああそうかまたマークかな、マークがあの後私を追い掛けて倒れている情けない私を抱えているんだろうとか思い込みゆっくりと瞼を開けると違った。マークじゃなかった、マークじゃないのだけれど懐かしくって、目を覚ましている私に気付いてない彼に声を出そうと必死に藻掻いて、かすれた声で名前を呼んでみる。


『いちのせ……?』


ぴたりと彼の進む足が止まって首を下げ私を見つめてにこりと笑った、懐かしい、一之瀬なんだ、なんで、なんで、日本に帰ったんじゃ、


「ビックリしちゃったよ。家に帰る途中で君が倒れているんだから」

『え、と…その?なんで…?』

「ただいまってこと、帰って来たんだ」


懐かしいなぁと一之瀬は笑って辺りをキョロキョロする、確かマークの隣の家だよねと言えばもうすぐそこ、そしてまた聞き慣れた声が私の名前を呼んでビクリと反応してしまって、今度こそはマークだ。って何が今度こそ、よ。期待しちゃってるみたいで馬鹿みたいね。
右を向けば眉間にシワを寄せて駆け寄ってくる彼が居た、うわ、気まずい。私の言った言葉の後悔の波がまた押し寄せて。


「って、カズヤ!?」

『マーク、ただいま!相変わらずだね』


一之瀬はふふっと私とマークを交互に見て微笑むとマークは苦く表情を歪ませた、取り敢えず一之瀬に下ろしてと頼み地面に足を着いて二本足で立てば体がフラついた瞬間でマークは私の体を透かさず支えてくれる。優しさが、痛くてたまらない、私はあんな言葉を発したのに。それでも私を支えてくれるだなんて、嬉しい半面、辛かったのだ。
一之瀬にお礼を言おうとする前に私はマークに腕を掴まれ、自分の家に引き込まれてしまった、玄関に入るなりくるりと私の方を向いて、抱き締めた。頭がこんがらがる、てっきり怒鳴って嫌うのかと思っていたのだから。もう一度考えてみる、私はあんなに酷い言葉を言ったのだ。なのにマークはいつものしっかりとしたような口調から弱々しくって消えそうな声で、口を開いた。


「……ごめんな、」


謝られて、しまった。違う、違う、謝るのは私だ、私なのにマークが言った、そして私の心はまた微々が入ったようにズタズタに傷付けられる。自分がどんなに汚くて醜いか、ポロポロと涙が零れて私が泣けば抱き締めた腕を急いで離しどこか痛いのかと必死になる姿にもなにもかも憎くてたまらない。なのに嬉しいんだ、私は世界で一番汚い人間の代表だろう、きっと。











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100922



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