重たい瞳を開けるとそこは別の世界みたいに真っ黒な天井で、ここはどこなの。上半身を起こすと腹部が軋む、痛い。


「やぁ、お目覚めで」


声のする方へ顔を向けるとベッドの真横のロッキングチェアに座っている男、コイツは見たことがある。頭がぐるぐるして思い出せない……。何だろうこの感覚は、


『痛い……』

「ちょっと手荒にやったからね」


にこりと男が笑う、途端に蘇る記憶。ああ思い出したくなかった、胸が締め付けられて息が出来なくて、喉も胃も中身はゼロ。怒りが沸々と込み上げて自分の腕が上がる、ぱしん。この音は叩かれても、叩たいたのでもなく男が私の手首を掴んだ音。ギリギリと掴まれた手首はとても痛くてたまらない。だけど私はまた男を睨んでやった


「…やっぱり君はいいね」

『何がよ』

「その目、とか」

『私はアンタを憎んでるのよ、この目で!』

「気持ちいいよ、その憎しみしかない目」


ぞわわと鳥肌がたったから急いで腕を振って掴まれた手首をほどす、くっきりと手の痕が赤くなって残っている。怖かった、だから無我夢中で体をベッドから起こして真っ直ぐにある大きなドアのノブに手を掛ける、がちゃがちゃ。開かない、だんっと両耳から痛い程の雑音。左右には男の腕があり、鋏まれるような製図になったようだ。後ろを振り返ると鋭い目つきが刺さる、さっきとは別人な雰囲気の男が私を上から見る。


「ゲームをしようか」


優しく男の手が私の手に触れる、そして何かを渡された。護身用のパレットナイフ、きらりと光に反射したように輝いた。この部屋には光も灯りもないのに。


「今から明日までに俺を殺せば君は自由宣告。」

『は……?』

「勿論、俺は君に手を出さないよ。防御はさせてもらうけど」

『……分かった、でもアンタは良いの?』


これは攻撃手段を持っている私の方が圧倒的に有利だ、遊びで例えると鬼ごっこ。一生鬼役の変わらない、そんな鬼ごっこの要求。
私が尋ねると男はにこりとまた笑みを零してもちろん、と言った。コイツは死にたいのか、それともただの私への挑発なのかしら。なら受けてやろうじゃない、そこら辺のお嬢様と同じにはしてほしくない。甘えて、親の臑かじってるわけじゃないのよ、私は。
私は男に笑い掛けると男も、ふっと笑みを零した。


「よーいスタート」


ぱんと手を鳴らして男は私に手を振りながら軽快に走って行った、完璧舐められてるんだ。

歩きずらいロングドレスの襞を太股が見えるほどに破いた、こんなに短いドレスは初めてだったから何だか新鮮。














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