誰得なきやまフィアぱろ
ぱぁんと弾けた音が響く、ああ拳銃は楽だ、触れずに殺せるから。びりびりと手のひらが汗ばんで痺れる、嫌悪感なんてもうない。地面に広がるのは真っ赤な血、どろどろしてて気味が悪い、どうもこれだけは苦手だ。早く帰ろう、目的は終わったしこの屋敷には誰一人、生きている者はいない、ハズ。
するとゆっくりと古そうなドアの音がして、かたん。一人、女がこの部屋に入ってきた、大理石の床には分厚いハードカバーのノベル。
『あ…あ、おとうさ、ま……』
真っ白いレースのワンピースと胸元にはきらきらのエメラルド。この屋敷の主の娘だろう、大きな瞳が段々と水が溜まってゆく、そして零れた。女に近寄ろうと足を進める、歩く度にぴちゃっと血が靴に付着しているのが分かる。
女の目の前に立つと威嚇するように睨まれた、その視線は好きだよ。
「威勢がいいんだね」
『あなたが…お父様を、』
「そうさ」
『っ…!なんで殺し、うっ!』
五月蝿く言葉を吐くように言うから、腹部を気絶させる程度に殴った、ふらりと前に倒れるのを右腕で抱き止め、女の全体重の圧力。とても軽い。柔らかくて、思いっきり力を込めれば潰れてしまいそうな程だ。
「良い手土産にでもするよ」
ぽそりと呟いた言葉はどこにも響かなかった、真っ赤な血を付着させたまま歩くのはメリットにもならないから屋敷の靴を一足、履き替える。純白でまとまっていた屋敷は真っ赤で歪な鉄の香り。胸やけがする、早く出よう。お土産を持って。
***
続くよ