すぱんっと爽快な音、自分のシュートが入り、丁度ピーっと甲高いホイッスルが鳴る、試合終了の合図。ちらり、彼女が嬉しそうに笑っていたから、思わず。
「愛してるよ!」
投げキッスを飛ばして聞こえるように叫んだ、観客席の後ろ側、涙目でふるふると肩を揺らし耐えてる彼女。ああ可愛いなぁ。
隣に座ってるルカが彼女の頭を撫でて励ましている。
「あーあ…後が怖いぞフィディオ」
ジャンルカが呆れたように俺を見た、後悔はしてない。
*
『フィディオ!』
たたたと素早い足音が近付き、ばんっと大きく控え室の扉が開く、涙目で真っ赤に顔を染めている彼女が居た。あれ、ここ関係者以外立ち入り禁止なんだけどな。
ずかずかと俺の前に立ちユニフォームの首元をぐわしと掴まれた、今にも泣きそうな表情。後ろではルカがにやにやと笑っているし、アンジェロがあわあわとし始めたがジャンルカがほっとけ、と告げ口、え、俺達チームメイトだよね。
『なんなの、あれ!』
「何って愛情表現?」
『う…、違う愛情表現はないの!?というかアンタに常識はないのか!』
こっちは恥ずかしくて死ぬかと思ったんだから、と大きな声で訴えてくる。残念だけど恥ずかしさでは死なないよって笑って真実を打ち明けたらぱしん、と頬を打たれた、痛い。
流石にアンジェロが見ていられないのか彼女の名前を呟き服の裾を掴んでうるうるとしたら、う…、と呻きユニフォームを掴む首元の力が緩んだ、アンジェロが天使に見える。
『…フィディオ、お願いだからあれは止めて……』
「だって、俺が点入れた時の君、どれだけ可愛いか知らないよね」
『知るわけないじゃないか!』
「だから、それを思い知らせようと」
『もっと別の方法は無かったの!?』
「あ、あと俺のって示そうかと」
俺が笑ってそう言うと、更に彼女は顔を真っ赤にする。ああもう本当可愛い。後悔出来ない。
とうとうユニフォームの首元を離すと首元に付いたシワを直すと俯いて、反省のポーズ。そして口をくぐもらせる。
『…あの、その、嬉しいんだけどね……』
「だよね」
『…………。』
「ごめんごめん、続き話していいよ」
じろりと下から俺を睨む、そんな顔しても可愛いだけなのに
『…その、あの………』
「うん?」
『………っ、何でもない!』
くるりと後ろに体の向きを変えた彼女を抱き締めてわざと耳元で呟く、俺ってずるいかもね。
「最後まで、言わないと帰さないよ」
『………………っ、』
どきん、どきん。壊れそうなぐらい鳴っている彼女の心拍音が俺を引き立てる、そんな彼女にいつも愛おしいと思う俺は相当ハマっていて、一生抜け出すことはできないだろう。
これは愛情表現です。
***
フィディオが鬼畜すぎた
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