掴もうとした自分の手のひらを止めた、ぴたり。そして問い掛ける、このまま彼の手を掴んでいいのか、と。頭のなかでそんな考えがぐるぐると過る。私は、私は、この手を掴んだらまた傷付けてしまうんじゃないかと。こうして目の前に痛々しく包帯が巻かれている彼の体にも触れられずに立ち尽くして1時間、涙が溢れだした、それをただ真っ白で狭いワンルームの病室の床に落ちながら必死で拭うのだ、こんなにも泣いてるのにこんなにも悲しいのに彼は目を開けてはくれない、私にはこれくらいの絶望感がお似合いなんだろうか、そう、きっと。
もう何度目手を差し伸べたのだろうかなんて忘れた、怖い、触れることができない手がカタカタと震える
『ごめんなさい、ごめんなさい』
何度謝ったんだろう。
目が涙で滲んでる、もう彼の顔も見れない視界がぼやける嗚呼もう逸そ見えなくなればいいのに、真っ暗な世界になれば少しは楽になれるのだろう、それほど目に映る存在の価値観が大きいことなんて分かってる、だから人の第一印象は重視されているんだ。
床に座り込んだ。冷たい、感じる温度は彼の体温と同じなのかな、そう思ってしまう完全なマイナス思考に自分で自分をふふふ、とあざけわらった。とうとう私は頭まで可笑しくなったんじゃないのか。
助けて、助けて。
彼の声が聞きたい、彼の目が見たい、彼の温もりを感じたい、たくさんたくさんあるの、信じてなかったと口癖にしていた神様に願います、どうかお願い。
目を閉じても耳で伝わったパイプ音に私は立ち上がるの。
ありがとう、ありがとう。
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song 大塚愛
100714