『やだ』
ぱしん、と差し伸べられたフィディオの手を振り払う
イタリア代表となった彼は見事に予選で優勝し、この地区の代表と化した。だからお別れだ、私はフィディオとさよならしないとだめなんだ、私が、私が居たら、邪魔なんだ。
彼の顔を見ると胸が痛かった、泣きそうになる、やめてよ。
「なんで、一緒にライオコット島に行こう」
『行かない』
「彼女は俺と居たくないの?俺はいつも近くに居ていつも1番に彼女に応援してもらいたいんだ!」
やめて、やめて!私だって彼と一緒に居たい、いつも彼のプレイを見て浸っていたいよ、だけどだけど私は……ただの足手まといになるだけで。
『…フィディオが、好きだよ』
「じゃあ一緒に来」
『それじゃ、だめなの』
シュート決めた後は絶対に私に向かって手を振ってくれたり、勝った時はおもっきり抱き締めたりしたい、それを思えば思うほど、彼は代表なのだ、みんなから期待を抱かれているのだ、それを私というちっぽけな存在が邪魔する訳にはいかないんだ
『好きだからこそ、なの』
「……っ、」
『フィディオが好きだから、なの』
彼にはサッカーに集中してほしい、頑張ってほしい
『だから、帰ってきたらすぐに私を抱き締めて』
「………うん」
『いっぱいいっぱいキスして、いっぱいいっぱいフィディオを感じさせて』
「分かった」
ぎゅっとフィディオに抱き締められた、ああなんて安心するんだろう、やっぱり私は彼が好きなんだ、好きで好きでたまらないんだ
出発日、私は彼に笑顔いっぱいで手をふり、見送ったのだった。
いっぱい、いっぱい
***
ふ……ぃ、で…ぃ…、おぉおおお!
100721