いたいいたいいたい、ほんとうにいたい。自分がわるいだなんてそんなことは分かってるに決まってる。だけどいたいものはいたい、今はそれに必死に耐えるだけだった。


「なに泣いてるんだ」


風介が私の部屋に入ってきた、
もう理由なんてどうでもいいそれよりいたい。


『虫歯が、いたい』


ずきん、ああまたいたい、少し喋っただけなのになんだこの強烈な痛みは。ずきずきずきずき。私、いつのまにか泣いてたのか情けないなあああああ本当神様仏様ごめんなさいごめんなさい最近やたらと甘いものを食べては歯磨きに手をぬいていたからだと分かっているのです、だから開放してください


「どっちの歯だ」


ベットでぐったりと横になっている私の元に近付いて来て目線を合わせる風介。私が左頬を指差すとそっと冷たい手が触れた。ひんやり、虫歯の痛みが癒えていく


「…夕食食べに来なかっただろう」


こくん、と頷く。風介は私を心配して来たってこと?いつものように本を借りにきたとかじゃないんだ


「どうだ?冷たくてきもちいいだろう」


優しく見つめられて、頷くのも忘れてしまう風介のもう片方の手で次は私の瞼を閉じさせるとちゅっと冷たい唇が左頬に甘く触れたのだ


「はやく、治しなよ」


そのまま風介とは目も合わないまま部屋から出ていった。いたみなんか忘れて、さっきまで虫歯に蝕まれていたのに今じゃ君に



蝕まれた
















***

虫歯が痛い頃の叫び



100620




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