すうっと赤色の髪の人物が細い指先で私の唇をなぞるぱしん、感情より先に私はその指先を退ける。


『…触らないで』

「どうして?」


貴方の機嫌を損ねた、なんて関係ない私は私のまま動くの、
私は私のまま思うの、たとえ此処から削除されても私が私は私の意思でありのままに表現する。彼の目が一瞬鋭く睨んだ後、にこりと微笑む。

―…偽造の癖に。


「ヒロト…が嫌いだからよ」


だから私も同じ様に返してあげた。鋭く睨んで、にこりと微笑む。

そしたら彼は私を見るなり顔をしかめた、いい気味ね

私も貴方と同じ。偽善者だってこと、知っているでしょう?


「俺は彼女が好きだよ」

『私はヒロトが嫌いよ』


そう私が言えば彼は私を抱き締めた。やめて、離して、放して、触れないで、いっそのこと殺して。

貴方から手放して。


『私は…誰も信じない、そう言ってヒロトも私をいつかは棄てるんでしょう?私を、塵を。』

「塵…じゃない、俺を信じて。」

『うそ、嘘よ、信じない。』


人間なんてすべて灰の様に醜くて穢い。同じ生き物を巣って、吐いて、堕して、棄てて、あげくに傷付けてまで。何が、信じて、よ。信じて、裏切られるのなら、私は信じない。


「君は綺麗だよ」

『うそつきね、そんな馬鹿なこと信じないわ』

「うそなんかついてないよ?」

『そう言われると余計に疑いたくなるわ』


疑う、疑っているのに。
私はまだグランの腕の中に居る。さっきみたいに叩いて拒めば良いのに。


「嫌なら拒めばいいんだよ?」

『……………嫌よ』

「じゃあさっきみたいに俺を叩いてよ」

『嫌よ』

「何で?」


人の腕の中なんて嫌い
グランの腕の中なんてもっと嫌いだ、叩いて、拒みたい。そして真っ白な頬に赤を付ければ良いのに。

できない、したくない。


『ヒロトを、傷付けるのはもうしたくないの』


嫌いなのに、嫌いなのに人間の温もりが欲しくて、貴方の温もりが欲しくて冷たい頬に温かな涙が流れたら、

ヒロトの唇が私の唇にそっと温もりを施した。



(君だけ信じたいと願う)




人間不心



















***

人間は嫌い、でも何故か
同じ温もりが恋しい。


100525




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