誰も別に別れが辛いだなんて言っていない。
むしろ嬉しい別れというのは世の中にたくさん存在すると思う。例えば嫌いな友達とか。

どっかの誰かが
「君は自分を愛してくれない人を一人失ったにすぎない。しかし、彼は自分を愛してくれる人を失ったのだ。彼の損失は君よりずっと大きい。君は何を苦しまねばならないのだろうか?本当につらいのは彼の方なのだよ」
失恋した人にこんなことを言ったらしいけど

そう言った人はきっと機転がきいて頭が切れるんだろう、哲学者というぐらいなのだから。
でも、彼は自分がその人に好かれていることでデメリットが発生しているのだから、私はデメリットが発生するくらいなら彼と同じことをしただろう。

実際その状況に立たないとわからないことがある。
他人の精神ばかり尊重してしまう私は、いつも自己暗示のような何かに縛り付けられて。

心が広いとよく言われる。
相手の事を相手の立場で考えたとき、私ならどうするか。
そう考えたとき、狭いと言われた心は一気に拡張する。
もちろん、悲しいことに変わりはない。ただ、私に個がないから、どうしても自分の意見をおしこめてしまう癖がある。
癖なので直したくとも直しようがない。

それで、引き止めもせず。
それで終わって、言えばよかったと後悔して。別に別れることが辛いことじゃない。

その程度のことでこうなってしまうことが辛いのだ。彼がほかの女が好きだろうと、それで別れを告げられて認めてしまって別れてしまう自分が嫌なのだ。

悔しくて仕方なくて、気持ちに反して瞳から涙は溢れてきて。

「なぁ、なまえ…」

「…ごめん、トニー…こんな話聞かせて」

挙句には人にもどかしいこの気持ちをわかって貰おうとなんてして。

「気にしてへんで、困ったら親分に頼ってええって」

「優しいね、いっつも聞いて貰ってばっかなのに」

こういうときばかり、いっぱい縋って聞いて貰ってばかりで一方的で。

「トニーありがとう。トニーがいるからなんか助けられる」

あぁ、なんて押し付けがましい
この関係に、終止符なんて打たせてあげないと言うかのような

「…せやな、いつでも頼りーな」
それ尚、そう言う彼が、どうしても手放せなくって。


私の笑顔の裏に孕む
彼の悲しみを含んだ柔らかな笑顔を知りて尚

彼との関係はここまでが限界だと言って。まるで無神経で
心が広いなんて、所詮は唯の周りの先入観。

「これからも、困った時はよろしく」

「まかしとき」

男は必死に燻る思いを押し殺し。





押し付けがましい愛情の切り
(彼は私を愛しているというのに)(なんて残酷な関係、)



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