「ねー、アル、チョコレート頂戴」

「えー、またかい?」

「アルもよく貰うでしょ私から!」

夏、薄暗くなった帰り道。
夕焼け色に染まった風景が、徐々に黒に侵されていく夏の夕暮れ。

大学から帰った私たちは、小学生の頃から変わらない帰り道を、二人で歩いていた。

「仕方ないなぁ…、ちゃんとほかのお菓子くれるのが条件だぞ!」

「わかってるよ!しつこいな、ねちねちしてると嫌われるよ!!私に!!」

「君に嫌われたら一緒に帰る人いなくなるじゃないか!!」

「じゃぁ、ねちねちすんな!」

別に恋人なわけではない
幼馴染なのは確かだけれど、本当にケンカもなく兄弟のように育ってきた
だから友達以上であり親友以上である事も事実

「…アルさぁ」

「?なんだい」

彼に恋をしていないわけじゃない
でも、恋をしてるかどうか聞かれたらハッキリとは答えられない。

「好きな人とかできた?」

そうして、またいつものように

「君こそ、できたのかい?」

同じ質問を何回も、繰り返して。
ただ彼がいつもと同じように私に返事するのを待って
私も彼に同じ答えを返す。

「いいや、そろそろ考えなきゃね」

「いつの間にか大学生だからね」

いつも曖昧なまま、この返答が、変わる時まで。
答えが変わったら、きっと
彼は、誰か、私の知らない女の人と結婚して
子供を産んで、育てて、死んで

私も、知らない男の人と結婚して
子供産んで、育てて、死んでゆくんだ。

でも、そうやって考えると妙に悲しくて
なのに、今のこの曖昧な関係は続けていたくて。

いくら悶々と考え込んだことか。
それも、彼と過ごしたこの十数年の月日ほどある。


「なんか、私たちこんなことばっかだよねー」

「そうかい?もう慣れたさ」

ただ、彼が私に帰属していることの安堵感が、欲しいだけなのだ。
恋人にはきっとなれない、けれど、友人というには親しすぎる
でもこの関係に終わりは来てほしくないと願い
また、永遠などは存在しないのだと気付かされるのだ。

それでも、今だけは。
この過ごした時間は私の頭に、死ぬまで記憶されていてほしい


そう。結論は簡単なの。






ああ、弱虫なんだね
(好きという感情は曖昧なまま)(いつか関係が壊れるその日まで、)



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