半兵衛が部屋にやってきた。どうやらいつもとは違って、官兵衛ではなく玲莉に用があるらしい。

「ってことで、玲莉借りるねー官兵衛殿」

 そう言ってやってきたのは、人通りの少ない場所の屋根の上。瓦屋根なんて登ったことがないと言うと、半兵衛は玲莉の体を軽々と屋根の上に上げた。華奢で小柄な見た目に反して意外と力持ちだ。戦場でもあんなに重い羅針盤を振り回している。

「ここが俺の秘密の昼寝場所。誰も来ないからゆっくり昼寝できるんだ」
「いいんですか?私に教えても…」
「玲莉だから特別に教えたんだよ。ここのことは俺と玲莉だけの秘密。誰にも言っちゃだめだよ」

 耳元で囁いて、緩やかに笑みを浮かべる半兵衛はなんだか艶やかだ。玲莉がドキッとしたのが伝わったのか、半兵衛は笑って玲莉から離れた。

「玲莉さぁ、子飼いの3人に求婚でもされたの?」

 急に振られた話に玲莉は驚いたが、すぐさま納得した。子飼いの3人には探し物を頼んでいた。

「されてないですよ。欲しい物は何だと聞かれたので答えただけです」
「3人で探せって?」
「はい。3人で仲良く考えるようにと」
「ふーん…」

 半兵衛は帽子を枕にして屋根の上に寝転がった。

「それが玲莉の欲しいものなんだ」
「はい」
「玲莉ってさぁ、変わってるよね。そこは服とか答えるところなんじゃない?それとも玲莉の世界の人はみんな無欲なの?」
「私も私の世界の人も、無欲ではないですよ。ただ私はこの世界でこうして不自由なく生きていることで十分なんです」

 どこかで野垂れ死んでいてもおかしくはなかったのに。こうやって城で暮らすなど、普通は考えられない。これ以上なく幸せだ。ほかに望むものなどあるだろうか。

「…3人は仲良く探してました?」
「うん。仲良く俺のところに来たよ。おもしろそうだから、いろんな人に聞いてみたらって助言しといた」
「半兵衛さんナイス!グッジョブ!ええと…よくやった!」
 戦国時代は長いが、気を抜くとすぐに外来語や英語が口から出てしまう。日本語は難しい。

「でもあの3人に分かるかなぁ…。ていうより、分かっても玲莉にあげられるかが問題だよね」
「ふふっ。そうですね」

 ごもっともな意見に笑いが零れる。一応ヒントも与えているので、自力で答えに至って欲しいのだけれど。


本当に欲しいもの

(そういえば、秀吉様とおねね様が呼んでたよ)
(えぇっ!?なんで早く言ってくれなかったんですか!?)


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