家に帰ると、三国志の住人が胡座をかいてテトリスをやっていた。三国志の住人こと司馬師子元は、約2000年後の世界にそれはそれはすばらしく順応していた。
「ただいまー」
「今日は早かったな」
「いやむしろ遅いくらいなんだけど」
 今日の帰宅ははいつもより2時間ほど遅い。
 チラリと見ればスコアが大変なことになっていた。どんだけテトリスに熱中したらそんなスコア出るの。教えて司馬師さん。
「ところで…私、言ったよね?今日は私忙しいから食器洗いだけでもしてって、私言ったよね?」
 シンクの中身、朝となんら変わってないどころか増えているのですが、どうしてですか司馬師さんや。
「玲莉、いい匂いがする…さては私の愛しの…」
「聞けよ人の話」
 そうツッコミを入れつつ、私は司馬師の前に赤い箱をつきだしてやった。司馬師の目がカッと見開かれる。
「関西に行ってた後輩がお土産にくれたんだー。ちゃんと仕事してくれたんならあげてもよかったんだけど、仕事サボった人に5〇1の肉まんはあげられないなー」
「私が悪かった」
 うむ。自分の否を認めることは良いことだ。
 食べたら食器洗いをすることを約束させて、私は司馬師に〇51の肉まんを箱ごとあげた。司馬師がいそいそと箱を開けて肉まんを一つ取り上げる。
 目を輝かせて、皮がああだ肉がこうだ、挙げ句の果てには肉まんに頬摺りする司馬師ははっきり言って変人でしかない。
「そんなことやってないで早く食べなさい。冷めるから」
 そう言って私も赤い箱から肉まんを一つ取り出しかじりついた。
 55〇の肉まんっておいしいよね。なぜ関西にしか販売しない。解せぬ。
「お前は本当にうまそうに肉まんを食べる」
「ふお?」
 どうやら見られていたらしい。司馬師は嬉しそうに笑っていた。写真撮らせたらオークションでバカ売れしそうなくらいいい笑顔だ。
「いや、あなたよりマシだと思うんだけど」
 目はキラキラ、頬は真っ赤、そして鼻息はとても荒い。そんなキャラ崩壊も甚だしい表情で、この司馬師子元という男は肉まんを食べるのだ。
 司馬師は肉まんに異常な愛を注いでいる。
 この前、残っていた肉まんを司馬師が残しておいたものだとは知らずに食べてしまったことがある。もう少しで極刑に処されてしまうところだった。
 コンビニに連れて行ったら大人しくなると思ったら、ピザまんやらカレーまんやらを見て発狂した。「外道!」とか言っていたが、結局食べた。そしてとても気に入っていた。
ちなみにその後、私はそのコンビニには一度も行っていない。

 この男は情熱を捧げるベクトルを間違えすぎだと常々思う。なぜ肉まんなんだ。私は司馬師の臣下の皆様が不憫でならない。もうちょっとこう…政治とか政治とか政治とかにその情熱をむけてみようとは考えなかったのだろうか。
「政に肉まんより多く情熱を注ぐ必要などない」
「おいこら勝手に人の心中読むな」
 あと臣下の皆様に全力で謝れ。




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