「ちょっとエース!つまみ食いしないで!」


出来上がった唐揚げに手を伸ばそうとしていたエースが驚いて飛び跳ねた。


「…腹減った」


キッチンのすぐそばの、ダイニングテーブルの椅子に乗って、見上げてくるエース。
普段見上げる側にいるからか、見上げるくるエースはすごく可愛らしい。
いや、仮にも20歳の男に可愛いというのはどうかとは思うのだけれども、可愛いのだから仕方がない。
なんで上目遣いなんてことを知っているんだこの子は。それは可愛い女の子の特技でしょう。お姉様キラーか。


「………。…もう少し待って」
「今食いたい」
「ダメ」
「え〜」


まるで仔犬のようだ。尻尾がついていればせわしなく振っていることだろう。


「…明日のご飯が抜きでいいならかまわないけど?」


そう言うとエースは押し黙ってしまった。それはさながら飼い主からお叱りを受けた仔犬。
見えない耳と尻尾が垂れ下がってしまったのがわかって、私は唐揚げの一つくらいあげたくなった。
箸で唐揚げを摘まもうとしたとき、私の隣にいたマルコが小さく笑った。エースがすぐに振り返る。


「…なんだよ」
「玲莉、こいつはお前が構ってくれなくて寂しいんだ」
「なっ!ばか!ちげぇよ!」


ダイニングとキッチンを分け隔てる台に手をついてエースが唸る。
それを見て、マルコは余計ににやにやと笑っているようだ。エースの眉がどんどん寄っていく。


「はいはい喧嘩しないの。マルコはエースをからかいすぎ、エースはつっかかりすぎ」
「エースは可愛いからねい。ついいじりたくなる」
「確かにそれはわかる」
「おい!」


ツッコミに二人して笑う。でもこれだとエースが拗ねてしまいそうなので、私はエースがそうなる前にエースの名を呼んだ。


「レタス、ちぎってくれない?そしたらその分ご飯が早くなるんだけど」
「……手伝う」


椅子から飛び降りてダイニングに回ってきたエースが少し嬉しそうな表情だったので、私もつられて微笑んだ。


仔犬の百面相

(こんなもんでいいのか?)
(うん。ありがとう。お陰で助かったよ。よーしよしよし!)
(俺は動物か!)




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エースは素直だからすぐ顔にでちゃう
あと犬っぽい
本当は仔犬ではないと思うけど、ヒロインから見たらエースは“弟みたいな子”だから、仔犬←





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