なつやすみがおわる



ジージーやらミンミンやら夏の暑さを加速させる声が聞こえる。
そういえば、クーラーのタイマーはとっくに切れていた。

一人で暮らしていたときは、クーラーを付けっぱなしにするタイプだった。
真子と暮らし始めてからは、お前はすぐ腹壊すやらなんやら言って寝るときはタイマーをかけるようになった。
本音を言えば暑くてたまらないのだが、お小言すら心地よい。

「アァー、真子ィー、あーつーいー」
「目ェ覚めたんか」
「ウン、セミと熱気のコンボにやられた」
「さよか」

真子もまだおきたばかりなのか少し気だるげで、わたしはそれを横目で見ながらベッドから抜け出す。

「どこ行くん?」
「シャワー浴びようと思って」
「一緒にはいろか」
「んー、もう一浴びしなきゃいけなくなりそうだからやめとく」

真子は不満げだったが、風呂場に向かう。
給湯器の温度を下げながら、ふと今日で夏休み最終日だと気づく。

「真子ィ〜」
「なんや、風呂場からやとよォ聞こえへんわー!」
「あとで言うー!」

夏休みってやっぱり短いなーなんて誰かの歌を頭に浮かべながら汗を流し終える。

ぺたりぺたり、体を拭くのも半ばに部屋着を着て真子のいる場所に戻る。
もう真子もベッドを出てソファで正午前のニュースを見ている。
意外とだらしなくないのだ、この男は。

「ねー、真子」
「おん」
「夏休み、終わっちゃうね」
「おー……」
「明日から仕事だねー」
「あー……」
「なぁんにもしなかったね、わたしたち」
「ほんならどっか行くかァー」
「んー、今日も暑いし真子とダラダラするー」

さよか、と呟いて真子はとなりに座ったわたしの肩を抱き寄せる。

「ほんまに、なァんもせんかったなー」
「ねー。あ、でも涼しくなったら、コンビニで花火買って来ようよ」
「ええなァ、それ」
「とりあえず、お昼食べよっか」

今日も実家から送られてきた大量の素麺を消費する。

「今日もお素麺でごめんねー」
「うまいで、コレ」
「ほんとー?私もう飽きちゃったから送ってこないでって言ってるのにー」
「ええご実家やん」
「まぁねー」
「来年の休みは、みつきの実家いこかー」
「……まじ?」

ぽとり。
真子の言葉にびっくりして素麺を容器に落とす。

「みつきひとりでちゃうでェ。俺も一緒に行くんや」
「えっ、遠いよ!」
「かまへんかまへん」
「娘さんをくださいって?」
「アホゥ、もっとマシなこと言うわ」

照れ臭そうにお箸をイジイジする真子を、いつもみたいに行儀悪ーいなんて揶揄えなかった。

去年とは全く違う夏休み最終日。


2018.8.13





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