NARUTO | ナノ


どえらいもんを見てしまった。パッと見間違いやすそうだけどドラえもんじゃないよ、ドえらいもんね。放課後、校門を出たところで携帯忘れたことに気付いて戻ってきたら、教室から人の気配がするのに声が聴こえてこなくて、なんかもう怪しい沈黙だったんですよ。その無音に紛れ込むように自分の息を圧し殺してドア窓から中を覗き込むと、クラスメイトの奈良くんがいて。そしてもうひとり、あれはうちの学年のマドンナに選ばれていたとにかくもうお人形さんみたいに可愛いマリ子ちゃんだ。その2人がそりゃもう絵になるようなキスを繰り広げているわけでして。むしろ、その先に進もうとしちゃったりしているわけで。


ドクンドクン、


ダメだ、刺激が強すぎる。漫画とかで見るのと生で見るのはやっぱ違うんだなぁ。AV観る男子の気持ちが初めて分かった気がするよ。ていうか、奈良くんてやっぱこういうの慣れてるんだなぁ。


ズキンズキン、


最近少し仲良くなった奈良くんは、私のことを茶化してくる時と今とでは全然雰囲気がちがう。なんでか分からないけど、少し胸が痛い。そりゃ私なんてマドンナと比べたら子どもっぽいし可愛くもないし、スタイルも良くないけど。付き合ったこととか、一回もないけど。っ、なんでこんなに苦しいんだ。


「、やっぱやめた」
「え?」


見ていられなくなって、ドア越しに座り込んでいた私の耳に久しぶりの音声が流れ込んできた。なんかやめたとか言ってるし足音も聞こえてくる。やばい、ここに居たら見つかっちゃう!でも、急に立って走っていくほうがさらに危険かも!え!どうしよう!


「なんでやめちゃうのぉ?」


マリ子ちゃんが可愛く不服な旨を訴えている。小悪魔ってこんな感じなのかな。女の私が壁越しに聴いててもたまらんものがあるわ。


「覗き魔がいるから」


ギクーーー、どう考えても私のことだー。バレてるよー。青ざめる私なんかおかまいなしに、勢いよく内側からドアが開けられた。


「ひ、久しぶり」
「さっきまでクラスで一緒だったろ」


眉間に深い皺を寄せていた奈良くんだけど、なぜかひと呼吸置いて軽く笑った。


「なんだよ、忘れもん?それか本当に覗きの趣味でもあんの?」
「ちが!携帯忘れたの、入ろうにも入れなかったんじゃん!バカ」


しどろもどろに答えていると、奈良くんの笑い声は増すばかり。しまいには喉の奥からククク、と堪えているような笑い方に切り替わる。


「なによもう!私はもう携帯取ったから帰るよ!あとはごゆっくり!!」
「クク、はーダメだ。おかしくてしかたねぇ」
「だからなにがよ!」
「かわいい」
「え、」


ボッ、と引火したように真っ赤になっていく私を見て、奈良くんが珍しく大声で笑った。




(なまえさっきから顔赤すぎ)



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