NARUTO | ナノ


「犬塚くん、」
「みょうじ」


昼休みも終わる頃、午後の授業の準備をしようと机の中から教科書を取りだした。そこに挟まっていたノートの切れ端みたいなものがヒラっと落ちてなんだろうと気付く。くしゃっとたたまれていたそれを丁寧に開くと、すっごい筆圧強そうな字体で「放課後体育館裏に来て」と書かれていた。ベタな展開どおりにその場所に行くと、あの字書いたの納得っていうほどワイルドな風貌の犬塚くんが待っていた。


「えーと、あの?」
「みょうじ」
「は、はい」


さっきから名前を呼ばれるだけなんだけど、なんなんでしょうこのプレイは。犬塚くんとは違うクラスだし、話したことも多分ないと思うんだけどまあなんていうんでしょう。良い意味でも悪い意味でも目立つ人だから存在は知っていた。そんな人が私に何の用なんだろう、と思いもしたけどこの状況は自惚れなんかじゃなくやっぱり告白されるんだと思う。ここに来るまでは半信半疑だったけど、目の前にいる犬塚くんが耳まで真っ赤なんだもん。


怖い人なのかなって思ったりしたこともあったけど、今この犬塚くんを見てそんなことは思わない。てか思えない。むしろちょっと可愛い。


「オレみょうじのこと好きになった!」


うわ、単刀直入。言われるの分かってたのにやっぱり私も体温が上がっていくのを止められない。きっと私も今顔真っ赤。昼休みの段階ではどうしよう、なんて返事しようとか考えてたけど頭で考えるよりも先に私の魂がもう答えを決めてたみたい。勝手に口が開いた。


「うん、いいよ」
「え?」
「私、犬塚くんと付き合う」


「ヤッターーーーーーーー」


喜びをこんなに体全体で表現する人がいるもんなんだなぁ。犬塚くんはもう今各駅とか急行とか目ではない。特急クラス、ヘタしたら新幹線なみの勢い。おっと、その速さで寄って来られたらちょっとビックリしちゃいます。思わず後ずさっちゃいます。


「みょうじ−−!」
「は、はい」
「サンキュな!今日からよろしくな!」


手を掴まれたら胸の位置に持っていかれて、思いっきりぶんぶん握手された。付き合う時ってこんなんだったっけ。するとどんどん近付く犬塚くんの顔。これはどう見ても、欲情してるーーーー。お手てつないだくらいで興奮するくらいなら今しなきゃよかったのに!


逃げ場がないところまで追いつめられた私は体育館の壁に背中を預ける形で犬塚くんとキスをした。築年数の古いうちの体育館は壁が石で出来ているからゴツゴツしていた。




痛みをのこした背骨
(犬塚くんの力が強いから、)(わ、わりぃ!)



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