SLAM DUNK | ナノ


健司はその顔がずるいと思う。どう考えてもずるいと思う。なんでそんなキレイな顔してんだろ。まったく興味ないだろうけどジュノンボーイとかジャニーズとか送ったら受かるんじゃないだろうか。ずるいずるいずるい。何がそんなにずるいってこの顔のくせに性格が悪い。けどあんまり仲良くない人はこの顔に騙されている!ずるいずるいずるい!
   


   
「健司あたしにも優しくしてよ」
「は?十分優しいだろ」
「その、は?がもうすでに優しくない」
「何言ってんだよ、ほら帰るぞ」
「あ、ちょっと待ってよー!」



ほら、あたしが支度していないのに少しも待つことをしてくれない。あー今隣のクラスのかわい子ちゃんと笑顔で挨拶!ちょ、ちょい待ったなんであたし以外の子にはそんな優しく笑うのー!?



「健司!お待たせ」
「ああ。じゃあまたな林」
「うん、藤真君またね」
   


きっと林さんはなんであたしみたいな平平凡凡の女が健司と付き合ってんだろって思ってんだろうなぁ。それはね、あたしも謎なんだよ。前になんであたしと付き合ってるの?って聞いたらお前がギャンギャンうるさかったからだろって言ったのよ。ギャンギャンて、せめてキャンキャンの小型犬にしてよ。



「なぁパフェ食いたい」
「は?」
「寄ってこーぜあそこ!お前の行きつけの」
「クリームランド?」
「そうそこ!」



でもきっと健司のこういう顔はみんな知らないと思う。クリームランド最初行った時とか目の輝きやばかったもん。こう見えて甘いもの好きとか絶対想像つかないもんなぁ。あたしも最初はびっくりしたっけ。



「今日はお前チョコ頼めよ」
「えーやだよあたし今日イチゴの気分」
「俺のトロピカルフルーツパフェに入ってるイチゴやるから。な」
「キウイもつけてくれたらいいよ」
「よし!」



いつものクールな感じはまったくないけどあたしは健司のこの顔のほうが好きだなぁ。と思うと上辺だけの優しい健司しか知らない学校の子より俄然自分のほうが特別な気がしてきた。こんなことで気分良くしちゃうあたしはとっても単純だ。


   
「健司!」
「なんだ、どうした?」
「大好き!」
   


健司は大きな目を見開いて顔を赤くした。



「熱くなった、早くパフェ食いたい」
「うん、行こう!」



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