あれから4日経った今でも、めいは目を覚まさない。
エリックのことはキングが片付けて、エリックも晴れて俺たちの仲間入り。
…なのに、一番に喜びそうなめいがいないなんて。
「草薙さん、めいどう…?」
「アカン。まだ目ぇ覚めんわ」
「…そっか」
毎日、めいがいつ起きても気づけるようにと草薙さんはお店に来るときめいを一緒に連れてきてソファーに寝かせてる。
そういや着替えとかどうしてんだろう。
「なんで起きないんスか。体に外傷はないって…」
「よっぽど体に負担かかっとったか、あるいは…」
「起きることを拒否してる…??」
「せや」
「なんスかそれ!!こいつが目ぇ覚めたくないって思ってるってことスか?!」
「そーなるな。前にもこないなことあったけど、こない目ぇ覚まさへんことなかったし…」
「でも…っ」
「落ち着いて八田。息はしてるからまだ死んだわけじゃないんだし」
「そう…スけど…」
焦ったように抗議する八田の肩に手を置くと、八田は悔しそうにうつむいた。
「俺…こいつが大変な時になにもしてやれねぇなんて…」
「それは俺たちも一緒だよ」
「いや…でも…」
「なぁ八田ちゃん。俺ら、八田ちゃんたちに感謝しとるんやで」
「感謝…スか??」
「せや。めいな、八田ちゃんと伏見がここ来るまでえらい夢見が悪かったんや」
「小さい頃とか特にね。いつも俺とか草薙さんを殺しちゃう夢見てたんだよね」
「そんで俺や十束の寝てるベッドに潜り込んでくるなんてしょっちゅうあったんや」
「…そうだったんスか」
めいはそうやって俺たちに触れることを精神安定材にしてた。
そこにいることを確認して安心してたんだ。
「最近、いや…八田ちゃんと伏見が来てからやな。そないなことがめっきり減ったんや。多分、八田ちゃんが俺は殺されへん言うたことや伏見が止める言うたことが大きかったんやろな」
「俺たちはめいに頼ってもらえるのは嬉しいんだけど、やっぱり少しでも笑顔でいてほしいからね。八田達がめいにいい影響を与えてくれたのは本当に感謝してるんだ」
俺たちがそう言うと、八田は少し恥ずかしそうに『…ぅす』とうつむいた。
そんな時、barの扉が開いた。
「いらっしゃい…て、世理ちゃん。それに…伏見も」
「こんにちは」
「…ども」
「なんや、珍しい組み合わせやな」
「猿…てめぇどのツラ下げて…!!」
今はbarには八田と俺と草薙さんしかいないから、俺と草薙さんで八田を止める。
「チッ…俺だって好きで来てるわけじゃねぇよ」
「伏見、あまり相手を刺激するな。目的を思い出しなさい」
「…チッ…すみません」
「なんや目的て」
草薙さんの空気が少し鋭くなった。
ホントに、この人の迫力にはキング以外敵う人はいないと思う。
「そう殺気だたないで。別にあなたたちに危害を与えようとしてるわけじゃないの」
「…めいが倒れたって副長に聞いたから会いに来ただけだ」
「なっ…」
俺に羽交い締めされてた八田が大人しくなる。
「めいに会いに来た…??」
「あぁ」
「…なんで」
「俺とこいつは"オトモダチ"だから」
そういうと、伏見はめいが寝てるソファーに近づいた。
その間に八田が入る。
「どけよ、美咲」
「………」
「何もしねぇよ」
いつもと雰囲気の違う伏見に圧されて八田は伏見の前からどいた。
伏見はめいの前まで来るとしゃがんでその顔を覗きこんだ。
「なぁ…めい」
「………」
「このまま起きねぇつもりかよ」
「………」
「お前がいないと…つまんねぇだろ」
起きろよ、と伏見はめいの手に自分の手を重ねた。
「……伏見、戻る時間よ」
「…わかってます」
「なんや、せわしないな」
「職務があるのよ」
伏見は名残惜しそうにめいを見ると、踵を返した。
「待ってる」
「…もういいの」
「ありがとうございました、副長」
「そう」
じゃあ私たちはこれで、と青の副長さんが言ったとき、消え入りそうな声が聞こえた。
「……伏見くんも…待っててくれる、なら……起きなきゃ…だね」
「「「めい!!!」」」
草薙さんが慌てて駆け寄る。
俺や八田、それに伏見もあとに続く。
「…おはよう、いずも」
「おはようやないわ!!どんなけ心配した思て…」
「お腹すいた」
「………」
草薙さんははぁ…と一つため息をつくと待っときと立ち上がった。
「めい」
「たたら…」
「大丈夫?」
「…エリック…生きてる?」
「生きてるよ、大丈夫」
「そっかぁ…」
めいは安心したように笑うと、突然泣き出した。
「うぇ…ひっく…」
「めい??」
「たたら…」
「うん」
「私を…止めてくれてありがとう…」
殺さなくてよかったぁ…とめいは珍しく人前で泣き続けてた。