「たたら」

いつもみたいにbarのカウンターでみんなのビデオを撮ってると、めいが寄ってきた。

「何??どうかした??」
「たたら、私これからちょっとの間たたらと一緒にいていい??」

唐突にそういわれて一瞬固まる。

「なんや、めい今度は十束んとこ世話になるん??」

めいは基本的には草薙さんの家に居候してるけどたまに他の人のところにくっついていくことがある。
それは3日だったり1週間だったりバラバラだ。
でも、俺のところにくると思ってなかった。

「いいけど…どうしたの??」
「…気になることが…ある」

そう言ってうつむいて服の裾をきゅっと掴むから、いいよと言うと嬉しそうに笑った。

「今日からお兄ちゃんと一緒ー」
「おいで可愛い妹」

そう言ってふざけながらきゃーっと抱き合ってると相変わらずやなと草薙さんに笑われた。

「あの二人兄弟なわけ…?」
「いや…血の繋がりはないハズ」
「ふーん…?」
「めいさんにとって特別なんだろ、尊さんと草薙さん…それに十束さんは」
「…へぇ」
「…気になるのか、エリック」
「別に」



「めい帰るよー」
「うん、あ、待って!」

俺が声をかけるとめいはパタパタと寄ってきて踵を返した。

「いずも」
「ん?なんや」
「ちゃんとご飯食べるんだよ?あとあんまし夜更かししないように!!それから…」
「あー…わかったからはよ行き」
「…うん、じゃあまた明日」

金髪くんもバイバイとめいはエリックにも手をふって俺のところに戻ってきた。

「お母さんみたいだね、めい」
「だって…」

いずもあんまし寝ないから、とめいはちょっと寂しそうに言った。

「…めい」
「なーに」
「今日のご飯何にしようか」
「オムライス!!」
「だよね。めい作ってくれる??」
「任せて」

めいは自分の行動の意味をあんまり人に話さない。
だから今回の行動の意味も俺にはよくわからないけど、エリックを名前で呼ばないことにも何か関係があるんだろう。
エリックに何か事情があることをめいもわかった上での行動なんだろう。
…本当にめいは言動は幼いのに全体を把握してる。

「めいって本当に17歳なの?(笑)」
「…一応17年前に生まれたけど」
「だよね」
「何、突然」
「いやぁ」
「老けてる??」
「いやいや、そんなことない」

そう言うとめいは何も言わずに俺の手を握った。

「お兄ちゃん」
「なんだい妹」
「妹は私でいい??」

意味がわからなくてめいをみると、めいは存外真剣な顔で見上げてた。

「めいは可愛い俺の妹」

そういうとめいはちょっとホッとしたように笑った。

「明日、」
「うん」
「金髪くんとお話、したい」
「うん」
「ちゃんと名前で…呼びたいから」

めいはそう言ってキュッと強く手を握った。


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