「…おはようございます」 「櫻井さんおはよー…ってどうしたの?!顔真っ赤だよ!!」 「…え??あぁ…暑いんですよ、きっと。気にしないでください」 「無理しちゃダメだよ!!」 種島さんの声が聞こえて休憩室を覗くと、いつもよりぼーっとした感じの櫻井さんがいた。 「今日はホールスタッフが少ないから…休めません」 そういって俺の脇を抜けて休憩室を出ようとするから俺は櫻井さんの襟首を掴む。 「こらこら。折角種島さんが心配してくれてるのに。…それに、熱もあるみたいだし本当無理はしない方がいいよ」 「…大丈夫ですってば…」 それでもジタバタするからどうしたものかと思ってたら横から佐藤くんが櫻井さんの襟首をつかんでぶら下げた。 「なんだ、お前熱あるのか」 「…ありません」 「相馬お前上がりだろ、送ってってやれ」 「え、俺?!」 「大丈夫です…働けます…」 あまりに強情だからついに佐藤くんがキレて、首の裏叩いて気絶させてしまった。 「佐藤くん…」 「…何も言うな。ほら、おぶるでもして送ってけ。お前なら櫻井ん家くらい知ってんだろ」 「知らないんだけど。近いの…??」 「知らんのか。…じゃあ店長にでもきけ」 そんな無責任な。 店長にきいたら幸い近いらしいから送ってってあげることにした。 「じゃあ相馬さん!!櫻井さんのことよろしくね!!ちゃんと送ってってあげるんだよ」 「はいはい。…櫻井さんの代わりは大丈夫なの??」 「八千代さんがこれるって!!それまでは私が頑張るよ!!」 「そっか。じゃあ頑張ってね種島さん」 種島さんに見送られて俺は櫻井さんの家へ向かった。 「…ここか」 結構小さめのアパートの2階に櫻井と手書きの表札があった。 時間も遅いし、もう誰かしらが帰ってきているようで電気がついてる。 ピンポーン "はいはーい、ちょっと待ってねー" 女の人…多分櫻井さんのお母さんの声がしてちょっとしてから扉が開く。 「あら、どなた……ってまなみちゃん?!」 「あ、櫻井さ……まなみさんのバイトの同僚の相馬です。まなみさん熱があるようなので…」 そういうと櫻井さんのお母さんは目を見開いた。 「相馬さん……もしかして博臣くんかしら?!」 「え…あぁ、はい。そうですが…」 「あらー!!久しぶりねぇ!!おばちゃんのこと覚えてる?!」 「!!??」 久しぶり?? なんのことだろう。 「あらそれよりまなみちゃんよね!!…申し訳ないんだけどまなみちゃんのお部屋まで…」 「あぁ、はい、わかりました」 知りたいこともたくさんある。 櫻井家は俺の何を知ってるのか。 「お邪魔します」 俺はやっぱり櫻井さんのことを何も知れていなかったようだ。 |