002 お泊まり
「まためいの夢見が悪い?」
「せや。本人は気づいておらんと思うけども」
「ふぅん?」
「忘れてしまうらしいで」
「あ〜なるほど」

草薙さんの話をききながら、めいの方を窺う。
八田と楽しそうにわいわいしてるところを見ると、本人には実害なさそうだけど。

「めいが気にしてないならいいんじゃない?」
「たまにな、息止まるんちゃうかってくらい苦しそうな時もあってな。夢やろうと、めいの頭ん中で起こってることなんは変わりないわけやし。…なんや不安になるよなことでも…」
「なぁんだ」
「なんや、十束」
「草薙さんの心配性の話かぁ。すごーく深刻な顔して話すから何ごとかと思っちゃった」
「…あんなぁ…」
「OK、任せて」

俺が茶化したら少し呆れた顔になったけど、それこっちがする顔だからね草薙さん。
確かに夢のことは心配だけど、言ってることもはやお父さんだからね。
彼氏の言うことじゃないからね。

「めい〜、八田〜」
「なぁに、たたら?」
「十束さん」

どうやら、ゲーム雑誌を見ながらアレがやりたいコレがやりたいって話をしてたらしい。
声をかけると2人がキョトンって感じの同じ顔してこっちを見る。

「お泊まり会しない?みんなで、布団とか毛布とか持ち寄ってHOMRAで雑魚寝するの。修学旅行みたいじゃない?」
「楽しそうっすね!!」
「…しゅーがくりょこー?」
「なっ、お前修学旅行知らねぇのか!?」
「うん」
「あ〜そっか、めいは学校で学修めてないもんねぇ」

不思議そうに首を傾げるめいに、修学旅行が何たるかを教えてあげると、みるみる目が輝いていく。

「しゅーがくりょこ!楽しそう!!」
「まぁ、今回はHOMRAに止まるだけだから旅行ではないんだけどね」
「ひと晩中、みんなと遊べる?」
「うん、そうだね」
「素敵!」

きゃっきゃとはしゃいでるめいを横目に草薙さんを見ると、至極めんどくさそうな顔をしていた。

「あら、草薙さんダメ?」
「…メシの世話は誰がすんねん」
「草薙さん作ってくれないかなぁって」
「私お手伝いする!」
「夜まで騒がれたら俺寝られへん」
「草薙さん元から夜ふかしじゃん」
「いずもが寝る時に一緒に寝る!」
「確かにめいって徹夜できなそうだよな」

草薙さんの断りたいワードを、お泊まりしたくてたまらないめいはどんどん論破していく。
極めつけは、

「私!いつもみたいに朝ごはん作るよ!みんなの分!ねっいいでしょ、いずも」
「…。」

あんなにキラッキラした目で見られたら、草薙さんもダメとは言えないだろうなぁ。
草薙さんの深いため息に思わず笑いが零れる。

「…しゃーないな」
「やったぁ」

めいは両手を上げてバンザイしている。
よっぽど嬉しかったのかな。

「よかったね、めい」
「みんなでマクラナゲするの」
「マクラナ…?あ、枕投げか」
「HOMRAの床をピッカピカにして、みんなでおふとん敷いて寝ようね」
「そうだね」

俺がめいの頭を撫でると、一瞬…ほんとに一瞬だけめいは何かを考えるように遠くの方へ目線を移した。
でも、すぐに笑顔に戻る。

「私、いずもとたたらの間で寝るね」
「どうして?」
「一番おだやかに寝れそう」
「ブッ…」

確かに吠舞羅のメンバーはなかなかイビキや寝相が大変そうだ。
まさかめいがそんなことを考えてご指名してくれたとは思ってなくて、不意打ちくらってツボに入ってしまった。

「ふっ…はは…!」
「?たたらが笑い出した」
「めい、放っとき。十束のツボはイマイチわからん。それより、ほんまにHOMRAにみんなで泊まるんなら、掃除に買い物、布団も運ばな。やることぎょーさんあるで」
「お掃除する!!そのあと、お買い物行ってついでにお布団持ってくる」
「待て待て待て。買うもんもぎょーさんあるのに、それに布団もて…そない荷物持てへんやろ」
「えー…?…いける気がする」
「無理やっ!持てたとして、布団が鎮目町歩いとったら何事かと思われるし」

布団が鎮目町を…。
めいが布団と買い物袋を持っているところを想像したら、確かに布団が歩いてる感じでさらに笑いがこみ上げてくる。

「くっ…草薙さっ…俺を笑い殺す気…?!」
「なんや…まだ笑っとったん…。知らんわ…」
「たたら笑いすぎ?ひぃひぃしてる」
「だい…大丈夫…ぶふっ」

めいが笑いながら背中をさすってくれて、草薙さんは呆れたようにため息をひとつついて笑った。

「楽しみだね、たたら」
「そうだね」

こうして、めいのためのお泊まり会作戦が始まった。


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bkm



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