―――ッ ―――ッ
そんなにうなるな。分かっちゃいるさ。
ちょっと時間をくれ。


東京メランコリック


深夜のラジオ放送から流れる歌。ありきたりなラブソング。同じ文句は聞き飽きた。
「つまんね」
小指でラジオのスイッチを切る。その曲を聞きたくなきゃ、スイッチを切りゃいい。
耳を塞ぐより、ずっと楽。
ありがとう、昔の偉人達よ。僕らの住む世界はこんなに豊かになりました。
ただね、
「ハァ……」
刺激が足りなくなった。
車はまだ空を走らないし、ケータイは変な方向へ進化していっている。
青い猫型ロボットの世界じゃあ、車はビュンビュン飛び回ってるってんのに。
ケータイの機能は電話とメールだけでいいだろ。
こんな世界で刺激が手に入る方法は一つしかない。他にもいっぱいあるだろうが、俺にはこの一つしか知らない。
“恋ヲスルコト”
俺にゃあ、無縁な話だ。恋愛下手な俺には。告白されたこともないし、したこともない。でも恋人は一人二人いた。ただし、見せかけの。
見せかけの恋人に見せかけの愛。もちろん賞味期限は短く。菓子パン並。
周りの同僚はどんどん結婚していっている。でも、焦んなよ俺。まだ20代前半だ。
まだ、な。
“この心はどうすればいいんでしょうね?”
さっきまで流れてた曲の文句。どうすればなんて知ったこっちゃない。
自分で考えろよ、んなモン。
家に帰った途端、カバンを投げ捨て、ネクタイを緩めた。
こんな堅苦しいネクタイを一日中してるから気が切羽詰ってくるんだ。
テレビをつけた。大して面白くもないトーク番組。消した。
…俺もあんなトーク、してんのかな……


1/3
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -