美音と俺は軽音楽部に入っていた。彼女はボーカルで俺はギター。
美音の透き通った声は聴く者すべてを魅了させた。かくいう俺もその一人だったりする。
優しい歌の時は柔らかい声。激しい歌の時は深い声。歌ごとに表情を変える彼女の声はいつも人々の心を揺さぶっていた。
そんな彼女の声が出なくなったのは今から半年前。
「…て欲し…っゴホッゴホッ!」
軽音部のメンバーで新曲を合わせていた、ある日の放課後。美音は歌っている途中、突然咳き込み始めた。
「大丈夫ですか、先輩!?」
ドラム担当の直人が心配そうに尋ねる。
「うん、大丈夫。今日はちょっと調子悪いみたい」
美音は明るい笑顔と一緒にそう返した。彼女の言葉を信じ、練習を再開した。が、
「好きだか―――………」
俺のギターを弾く手が自然と止まった。理由は簡単、美音の歌が止まったからだ。
これはさすがにおかしい。いつもなら軽々と出せるはずの音が出ないのだから。
「おい、美音お前…」
「だいじょぶ。気にしないで」
美音はまた笑って返した。でも、違和感を感じる。
「美音、声掠れてるぞ」
「へ…?」
「病院行った方がいいんじゃないですか?」
直人も優しく声をかける。
「いいよ、いいよ。もっかい練習しよ?」
美音はもう一度マイクを持った。歌いたいのは分かる。けど、
「いーや。今日の練習は終わりだ。美音、病院行くぞ」
「でも…!」
「ダメですよ。風邪かも知れないんですから、とりあえず病院行った方がいいですって」
「…ぅ…」
美音が病院嫌いなのは知ってる。だけど、心配なモンは心配だ。
「行くぞ」
「…うん…」


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