ごった煮 | ナノ

君に永遠を

よく見かける物語の最後。

こうして二人は幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。

昔はそんな言葉を本気で信じていて、少し前までは所詮空想上都合よく生まれた言葉だとバカにしていて、夢だと思っていた。
人生は山あり谷あり。天もあれば地獄だってあるのだ。けれど、私は小さい時から地獄を歩んできた口であったから、天の存在なんてすっかり頭になかったのである。
幸せなんてことば、耳にして感じても、こうして自分で体感するのはもっとずっと先の話だと思っていた。信じていた。
だから、今左の薬指に通された銀環の意味も、レギュラスの口から紡がれた言葉も、理解するのに暫く時間を要したのだ。
それはレギュラスに伝わったようで、彼は苦笑している。

「ねぇ、レギュラス。これは夢? 久しぶりに絵本なんて読んでいたから、その中にでも入り込んだのかな」

 さながら王子のようなレギュラスが目の前でかしずき、手をとって口付ける。そして用意されていた銀環。まるで昨日読んだ陳腐な絵本の中身のようで――思わず瞬きもせずにレギュラスの灰色の目を見つめた。
すると、レギュラスは苦笑を微笑みに変えた。

「まさか。現実だよ。ナマエ。その本はもう読み終えたんだろう? ――私と一生を共にしてほしい。私のとなりにいてほしいんだ、ナマエ」

 ずっと。ずっと。
微笑んだレギュラスは、最後のページが開かれたままで私の膝の上に置いてあった絵本を、そっと閉じた。

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