大学生×小学生






5月5日、こどもの日。
ゴールデンウイーク真っ只中であるにも関わらず、ソファーに全体重を預けてテレビを見遣る。

年甲斐もなく家族旅行だのなんだのと騒ぎ立てた挙げ句、柚くんのお守りを俺に押し付けて、結局は新婚旅行と称して両親は海外へと旅立ってしまった。

いや、まぁ…柚くんと二人っきりになれるから別にいんだけど。

「お兄ちゃん」
「ん?…どうしたの?」

隣に座っていた柚くんに呼ばれて返事をしてあげれば、嬉しそうに笑って俺の膝の上にこてんと頭を乗っける。
突拍子もない柚くんの行動に心臓が跳ねるも、なんとか落ち着かせて膝の上にある柚くんを覗き込む。

「柚くーん、一体何がしたいのかな?」
「えへへ〜。なんでもない」
「今日は随分くっついてくるね」

しょうがないなぁなんて言葉を漏らしつつ、甘えてくる柚くんが可愛くて可愛くて仕方ない。
無防備にくっついてくる柚くんの頬っぺたをプニプニと触ると、擽ったいのか肩を竦めて身を捩る。

「あんまり無防備にしてるとイタズラしちゃうぞ〜」

我ながら親父臭いと思う台詞を吐いて仰向けに寝転がっている柚くんのお腹をこちょこちょと擽った。

「ふゃ…ふはッ、お兄ちゃ、くすぐった…いぃ」

小さくて細い足をパタパタと動かして耐える柚くん。
そんな姿が愛しくて愛しくてどうしようもなくなってしまって、気付いたときには既に柚くんの額にキスを落としてしまった後だった。

「あー…柚くん。今の、父さんと母さんには内緒ね?」

人差し指を唇の前に立てて柚くんにお願いすると、素直に頷いてくれる。

柚くんのおでこにチューしたなんて知られたら、俺は母さんに殺されてしまうかもしれない。
いや…かもじゃない。確実に殺される。

「柚くん。内緒にして貰う代わりに、父さんと母さんが帰って来るまで兄ちゃんがなんでも言うこと聞いたげる」
「ほんと!?」

柚くんに限ってありえないだろうけど、どんな我儘でも受け入れる覚悟でそう言うと目を輝かせて起き上がった。

「じゃあね、じゃあね」
「うん?」
「お父さんとお母さんが帰ってくるまでお兄ちゃんにいっぱい甘えたい!」

何この可愛い生き物。
本当にもう襲ってやろうかと思ってしまうような笑顔の柚くんの髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱す。

「じゃ、いっぱい甘やかしてあげるからね」

父さんと母さんが帰ってくるまで色々と我慢できるか不安を覚えながらも、嬉しそうにはにかむ柚くんの頭を撫でてあげた。


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