社会人×高校生





「たまにはお前が飯作って」

同居人にそう言われたのが、今から約10分前。
この家に居候をしている俺が断れる筈もなく、珍しく俺は台所に立っていた。

掃除も洗濯も料理も、買い物ですらアイツの仕事。
俺は学校に通いながら、アイツに甘えてのんびりしていた。

初めは久し振りに包丁を持ったせいか、少し緊張したけど、それも徐々に慣れた。
順調に料理を進めて、フライパンに油を垂らす。

「まーさーきっ!」
「うわっ!」

急に後ろから抱き着かれてビビった。

「飯まだ?」
「まだ。つか離れろ!暑苦しい」
「何作ってんの?」
「…チャーハン」

離れて欲しくて肘でウザったい奴の鳩尾をグイグイと押すけど、それを無視して話を続けてくる。

「簡単な料理…」
「うっさい」

ボソリと呟いた声も、耳元では丸聞こえだ。

「あ!」
「今度はなんだよ!」

耳元で盛大に叫ばれたせいで、鼓膜がキーンとする。
文句を言ってやろうと振り向いたら、さっき俺が切った野菜を指差していた。

「お前、チャーハンにコレ入れんの?」
「え、うん」
「理解できない」

そいつが指差している野菜は、レタス。

折角、人が作ってあげようとしているというのに、その一言にカチンときた。
理解できないって、酷すぎる。

「レタスは生だろ」
「炒めても旨いんだよ!」
「いや、無理。絶対まずい」
「旨い!」

ブツブツ文句を言ってくるのをシカトして、レタスをフライパンに投入する。

「あ!入れやがった!」

そう文句を言って、後ろから俺の頬っぺたを軽く摘んで引っ張ってきた。
いつもなら抵抗するけど、火を使ってるから危なくて睨むことしかできなくて悔しい。

「真樹のアホ」
「むぅ」
「絶対に後でお仕置きだからな」

耳元で囁いてから、さっきまで機嫌悪かったのが嘘の様に鼻歌を歌いながらリビングへ行ってしまった。

レタスの入ったフライパンを見ながら、俺は溜息を吐く。





















「あれ?」
「レタス入ってなきゃ文句ないだろバーカ!」

結局、今日の晩ご飯はレタスなしのチャーハン。
と、俺だけセットでレタス炒めにした。



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