変人×高校生





「僕、引っ越すんだ」







寂しそうに言われても…












君の隣へ













この人は、俺が住んでるアパートの、道路を挟んだ向かいに住んでる加賀さん。

「ふーん」
「寂しくないの!?」

そう言って俺の肩を両手でガッシリ掴んだ。
顔を見てみると、少し涙目になっている。

涙目になってることにはビックリしたけど、この人が変人なのは前々から知ってるからなんとも思わない。

「まぁ…寂しいっちゃ寂しいけど」
「けど?」
「別にしょうがないし」

真顔でそう言ったら、ガックリとうなだれてしまった。

「ちょうだい」

下を向いたまま急にボソボソと喋るもんだから、言ってることが全然聞きとれない。
俺は、加賀さんの言ったことを聞きとるために耳をすました。

「パンツちょうだい」
「っは?」
「尊くんの今穿いてるパンツちょうだい」

そう言われて、言葉通り、開いた口が塞がらない。

加賀さんが変人なのは知ってる。
ふざけてんのか?
いや、でも、真顔だし。

「俺のパンツ…貰ってどうすんの?」

恐る恐る聞いてみる。
すると、俺がパンツをくれると思ったのか、ニコニコしながら手を差し出してきた。

「どうする、って。尊くんのパンツでオナ」
「ぎゃー!!」

そこまで言われて続きの言葉が何かわかんない程俺は馬鹿じゃない。
俺は顔が熱くなっていくのを感じながら、続きの言葉が言えないように加賀さんの口を右手でガッシリと塞いだ。

「馬鹿かアンタ!」

ふぅ、と、小さく息を吐いたと思ったら、急にケツをギュッと掴まれた。

「っひ」

ビックリして、変な声を出すとともに加賀さんの口を塞いでいた手も放してしまう。

「くれなきゃ引っ越しできない」
「意味わかんねぇし」
「くれないなら、ここで犯してもいいんだよ?」

真顔でそう言われてしまったら、俺に選択権はない。
俺は目に涙が溜まるのを感じた。

「わかった。そのかわり!今穿いてんのはヤダ!」
「はいはい」

仕方なさそうに了解すると、加賀さんはニッコリと微笑む。
そんな加賀さんに一瞬ドキッとしてかっこいいと思いつつも、俺のパンツを受け取って笑顔になったのを見て、ドキッとしたのはなかったことにした。

「じゃあね」
「あ、加賀さん!」
「ん?」
「えと、お元気で」
「うん」

ニッコリと笑う加賀さんを見ながら、黙ってれば男前なのに、と思わずにはいられなかった。

この笑顔がもう見られなくなるのかと思うと、少し寂しい。


















−ピンポーン
















あれから何日か経って、加賀さんは引っ越してしまった。

そういえば、どこに引っ越すか聞かなかったな。

そんなことを考えながら、家のチャイムが鳴ったのでドタドタと玄関へ向かう。

「はーい」

ガチャリとドアを開けた瞬間に、バタンと閉じてしまう。

うん、あれ?

俺が混乱していると、ドアが勝手に開けられた。

「隣に引っ越して来た加賀です」
「あ、はい」
「あれ?それだけ?」
「加賀さん、引っ越したんじゃ」
「うん、尊くんの部屋の隣にね」

そう言ってニヤリと楽しそうに笑った。
てっきり県外とかに引っ越すと思っていた俺は、なんとも言えないモヤモヤした気持ちになる。

「あ、じゃあパンツ返して下さいよ」
「無理だよ、もう使っちゃったもん」

恐ろしすぎて、なにをする為に俺のパンツを使ったのか聞くことはできなかった。

「これからよろしくね」

そう言って、ふわりと笑う加賀さんを見て、やっぱり遠くに引っ越してしまわなくて良かった、と安心する。



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