本当はずっといっしょにいてって言いたい。お仕事なんて行かないでって言いたい。もっと構ってって、言いたい。

でも、ティキは忙しいから

千年公の言う‘シナリオ'はもう始まっているという。だからティキは前より家にいる時間が少なくなったし、当然私のことを構ってくれることもめっきり減った。もっともそんなこと本人には一言も言ったことないけどね。第一ガラじゃないのよ。


こんな所でぶすくれてても仕方ない。部屋に戻って寝ようかな、そう考えていた午後11時。まだ乾ききっていない髪の毛をタオルでふきながら、浴室を出るべくドアを開けた。その時、少し前を歩いていたのは紛れもなくティキだった。帰ってきたんだ、本当は今すぐにでも飛びつきたい。

が、私はいいことを考えた

私は鼻歌を歌いながら歩いているティキに後ろからわざとらしくぶつかっていった。ティキは「うぉっ!?」と声を上げてよろめく。そして私は止まって彼を見上げる。ティキは訳が分からず周りを見回した。ティキが私の姿を認識したのを確認し、私はさも怒っているかのような顔をした。

「いったあ〜」
「は?」
「ちょ、痛い。絶対骨折れたわ痛いわ〜」
「え、なんなの?」
「どう責任とってくれますのん、お兄さん」

私はちょっと前に千年公と見たワイドショーのヤーサンの真似をしてメンチをきってみる。

「お前はどこの当たり屋だよ」
「どうしてくれますのん」
「どうするって」
「どうしてくれますのん!」
「・・・はあ」

ティキは頭をぐしゃぐしゃとかきむしり、きちんとセットしてあった前髪は、やる気なく額に落ちた。あ、私の好きな家のティキだ。そして私の目線に合わせてかがみ、呆れたように笑って私に問う。

「で、どうして欲しいの?」
「うぇ、えぇ?」
「ん?」
「えっと、」
「なに、さっきまでの勢いはどこ行ったわけ」

久しぶりのティキがいつもと違う気がしてたじろぐ。いつもはもっと適当にあしらうじゃんか。私がたじろぐ一方で、ティキは余裕な笑みで私を見ている。

「寂しかった?」
「は!?」
「俺がいなくて」
「寂しくなんかない!」
「顔、赤いけど」
「お風呂上がりだから!」
「ふーん?」

ティキが私の乾ききってない髪を手に取り、匂いをかぐような仕草をする。ビクついた私の反応を楽しむように笑って、私の頬にキスをした。

「ちょっ・・・と!!」
「あ、口が良かった?」
「そういう問題じゃない!」
「かーわい」

ティキは立ち上がって、私の頭を優しく撫でた。

「ただいま」

と言って。



ただいまと言って



20111223



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