「でさ、ユウがさ―」
ある夕方のこと、私はアレンの委員会が終わるのを待っていた。
一緒に帰るという約束。
だから待っている間にそこにいたラビと話していた。それだけだ。
「ひかり、そろそろ行きますよ」
声のした方を振り向けばアレンがドアからひょっこり顔を出していた。「終わった?」と聞けば、アレンは柔く微笑んだ。だから私はラビに別れを告げて教室を出た。
アレンが何も言わずに昇降口に向かうので私も数歩後を歩く。
アレンはカバンを持っていなかった。
昇降口で立ち止まってアレンが私を見る。笑うでもなく、怒るでもなく、ただ、私を見ていた。
「アレン、カバンは?」
「・・・会議室」
「なんで、会議室?」
委員会終わったんじゃ?
「ちょっと、待ってて」
え?
「え、委員会は」
「まだ終わってない」
「え、どうし・・・」
て、と言う前に、私の声は遮られた。直後、視界は真っ暗になって心地いい匂いが脳を満たした。
あ、抱きしめられてる。
いつもより心なしか力が強くて、まさに‘ぎゅう’っていう感じ。
「どうしたの?」と問えば、少しかすれた低めの声が耳をかすめた。
「一人で、待ってて」
犬でもなでるみたいに、私の頭に手を置いて、彼は微笑んだ。
ぎゅう。
――――――
5分クオリティー。
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