渡すなら今、今しかない。
「アーレン♪」
私に背を向けて勉強しているアレンに後ろから思いっきり抱き付いた。
「わっ!びっくりした〜なに、ひかり。」
目を丸くして振り向いたアレン。私の大好きな人。そして今日は、
「渡したいものがあるの。」
女の子の一大事。
「なに?」
アレンはニッコリ笑う、今日という日を知ってか知らずかものすごーくご機嫌だ
「ちょっと待って!」
私はアレンの首に回していた手をほどいてアレンの部屋の隅に置いてあるチョコを取るべく立ち上がった。
部屋の隅まで歩いていき、彼に背を向ける。そしてわざと雑に置いたコートをどかすと、昨日作ったガトーショコラ。アレンにバレないようにコートで隠しておいたのだ。
ふふ、完璧。
「なに笑ってるんですか?」
「ぅあっ!」
いきなり背後から声がした。二、三度まばたきをして状況を確認する。背後から聞こえるアレンの声、首に回された腕、アレンの匂い。
抱き締められている。
一気に体が硬直する。今日は私が驚かせる日なのに(私がびっくりしてどうする!)。
「ア、アレン?」
「それなあに?」
アレンの視線がチョコに向いた。あ、コイツ確信犯だ。
「チョ、チョコ。アレンに作ったよ。」
「本当ですか?嬉しいです。」
絶対知ってたくせに、そう呟いたら後ろからクスクスと笑う声がした。弄ばれたみたい。不服なのでアレンの両腕から逃れようとする。
が、逃れるどころかアレンは力を強めて私の首に顔をうずめた。そして耳元で囁いた。
「だって必死なひかりが可愛かったんですもん。」
アレンはずるい、そういうのに弱いこと知ってるくせに。
そのまま私の首に、頬に、おでこにキスを落とす。もう恥ずかしくておかしくなりそうだ。キスを避けるように俯むいても、すぐにまた視界はアレンでいっぱいになる。
「ひかり照れてる?」
「ちょ、見ないで!」
「かわい、
ねえ、チョコより欲しい物あるんだけど。」
「な、何?」
アレンの目が妖しく光る。
「ひかり。」
それじゃ、いただきます。
今、装飾リボンが外される。
チョコより甘い
――――――
ピュアなアレンさんを書こうと思ってこうなりました(笑)
ハッピーバレンタイン!
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